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加納朋子『二百十番館にようこそ』

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★内容紹介
・主人公は、就職活動につまずいて以来、実家暮らしでネトゲにはまるニートの「俺」。ある日、死んだ叔父さんが「俺」に離島の不動産を遺したと聞かされ、相続手続きのため弁護士と一緒にその離島に向かうことになった。ところが不動産と言っても会社の研修センターだった建物で、別荘として使うようなものではない。早々に売却するか、と考えていたとき、弁護士から意外なことを聞かされる。「俺」が島に来ている間に両親は家を売って引っ越してしまっており、「俺」にはもう帰る場所がないという。
・これはニートの息子に堪忍袋の尾が切れた両親の計略だった。「もう面倒はみない」と通告され、身の回りの荷物と当座の生活費だけ渡された「俺」は、その研修センターで自活するしかない。
・高齢者ばかり二十人足らずの島の住民、不便な流通、厳しい自然。生活のため、その建物を利用してニート専用シェアハウスを営むことにしたが、集まったのはやはり、家族や周囲から見放されたような若者ばかり3人だった……。
★読みどころ1)ニートたちの人間模様と変化

離島に集まったニートたちは、みんな問題を抱えている。人から否定されることを過剰に恐れたり、コミュニケーションが苦手だったり、人との距離感がわからなかったり、過去の傷を抱えていたりという彼らが、自活するしかない島の中で少しずつ「できなかったことができるようになる」過程がとても力強く、応援してしまう。
★読みどころ2)離島という舞台設定
ニートが社会を知るという話は決して目新しいものではない。なのにぐいぐい読まされるのは、離島という舞台の巧さ。高齢者ばかりという環境の中で教えられることが多い一方、若者が手助けできることも多々ある。世代を超えてコミットすることの面白さと奥深さ。さらに離島ならではのさまざまな問題が登場し、れを解決しようとするニートたちの活躍も読みどころ。
★読みどころ3)ニート全否定の物語ではない
ニートたちの共通点はオンラインゲームにはまっていること。彼らは現実生活から逃げてゲームの世界にはまったが、ゲームという逃げ場がなかったらもっとひどいことになっていたかもしれない。ゲームで培ったものが、実生活に活かされていく場面もある。また、ラストではゲームを通じて感動的かつ驚きの展開が。
・行き詰まっている人にとっての応援歌であり、元気の出る物語。
加納朋子『二百十番館にようこそ』
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