多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

楡周平『食王』

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★内容紹介
・主人公は3人。まずひとりめは、大手外食チェーンの経営者、梅森氏。かつてバブル崩壊時に会社が潰れそうになったとき、付き合いのあった築地市場の社長たちが援助してくれ、再出発できたという過去がある。その時の恩人のひとりが築地の移転を機に会社を畳むことになったが、麻布のビルに買い手がつかず困っていた。立地が悪く、飲食店としては使えない呪われたビルだという。梅森氏は昔の恩返しのつもりでそのビルを購入するが、使い道に悩むことに。
・ふたりめの主人公は、そのビルを売った社長の息子。彼は家業を継がず、金沢の老舗料亭で板前として実績を積んでいる。ある日、料亭の次期社長が東京への支店の出店を提案。楽観的なその計画は到底成功するとは思えないが板前の立場では逆らうことができず……。
・3人目の主人公は、岩手出身で東京で就職活動をしている女子大生。英語に堪能で、将来は海外で仕事がしたいと思っている。ただ、故郷の岩手の町は震災以降観光客が減って寂れる一方。おいしい海産物がたくさんあって、通販やデパートの催事場では人気なのに、岩手まで来てくれる観光客は少ない。そんな故郷を捨てて海外に行っていいものか悩む。
・3人の抱える問題が思わぬ形で……
★読みどころ1)ストーリーの面白さ。
板前と女子大生の抱える問題が、なんらかの過程を経て、最初の麻布のビルに関係してくるんだろうという予想はできる。ところが彼らがなかなか出会わない。パズルのピースがあちこちにあるのに、それが見えているのは読者だけ。しかも読者にも、そのピースが合わさったときにどんな絵が見えるかわからないので実に焦ったい。その分、ラストの爽快感は文句なし。その手があったか、と拍手したくなる。
・読みどころ2)地方が抱える問題を解決する社会派テーマ
今は全国どこにいても食材がお取り寄せできたり地方の名店が都会に出店したりで、なかなか地方に人が流れない。けれどその場所にいかなければ味わえないものもある。どうやって地方に人を呼ぶか、そのアイディアが描かれる。
・今は旅行も難しいが、落ち着いたら必ず地方に行きたくなる美味しい物語。

楡周平『食王』
祥伝社から税込1980円で販売中です。

 
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