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近藤史恵『夜の向こうの蛹たち』

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★内容紹介
・女性三人の関係を描いた、スリリングな恋愛小説。
・主人公は人気作家の織部妙(おりべ・たえ)。彼女は新人作家・橋本さなぎのデビュー作を読んで、その世界観に衝撃を受ける。ところが文学賞のパーティで会った橋本は、前から織部のファンだったと大喜びで、織部はかえってしらけてしまう。逆に織部の興味を惹いたのは、橋本の秘書として紹介された若い女性、初芝祐(ゆう)だった。
・実は織部はレズビアンで、初芝にほぼ一目惚れ。なんとか彼女と親しくなりたいと考える。橋本は憧れの先輩作家である織部に猛アピール。その一方で、秘書の初芝に対してはかなり高圧的な態度を取るが、初芝はそれを気にした様子はない。奇妙な三角関係の中で、織部は、橋本さなぎの印象と彼女の小説が合っていないことに違和感を覚える。むしろこの小説は、初芝のイメージに近いのではないか……?
★読みどころ1)ルッキズムについての物語
ルッキズムとは、見た目で人を評価し、差別すること。織部と橋本は一般に美人と呼ばれる容姿なのに対し、初芝はそうではない。そして三人とも、その容姿のせいでこれまで嫌な思いをしてきた。たとえば、編集者が織部に対し、「橋本さなぎはすごい美人なので、同じ美人作家の織部先生と美女対談なんてどうですか?」と打診する場面がある。これに織部は怒るが、編集者は「褒めてるのに」と怒られる意味がわからない。こういうことの繰り返しが、実は橋本と初芝の秘密にかかわってくる。
★読みどころ2)女性同士のスリリングな関係
三人にはそれぞれ秘密があり、けれど親しくなりたいと思う気持ちも真実。そこで、どこまでなら見せあっても大丈夫か、まるで1枚ずつカードを切るようにして関係を築いていく。この様子がとてもリアル。外から見ると「打算的」とか「どろどろしてる」ふうに見えるが、嫌な思いをしたり傷付いたりしても、それでもつながっていたいからカードを見せ合う。事情を知っている読者からすれば「それはダメ!」というハラハラ展開も。

・三人とも、相手を見て『この人のようになりたい』『私にはないものを持ってる』と感じている。ということは、自分はダメだと思っている人も、外から見ると、実はそうでもない。コンプレックスから自由になれる物語。

近藤史恵『夜の向こうの蛹たち』
祥伝社から1650円で販売中です。

 
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