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田中兆子『あとを継ぐ人』

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★内容紹介
・「あとつぎ」をテーマにした短編集。家業を継ぐかどうか……という話ではあるが、それだけではない。
・「後継ぎのいない理容店」早くに妻と離婚し、一人息子を男手ひとつで育てた理容店主。だが息子は高校を卒業すると反対を押し切って相撲部屋へ入門、引退後は介護の仕事に。父親は彼の選択を頑として認めなかった。
・「女社長の結婚」稼業の麩菓子工場を継いで社長になった長女。奮闘しているがなかなか結果が出ない。そして母から結婚のプレッシャーが……。
・「わが社のマニュアル」従業員のほとんどが知的障害者というチョーク会社に転職した20代の若者。同じ事務職の同僚がコミュニケーションがうまくできない人でなんとかなじもうとするが空回りばかり。これは「引き継ぎ」の話。
・「親子三代」田舎で酪農を営む実家を継がず、東京で就職、結婚した主人公。しかし就活がうまくいかない息子が、祖父の酪農を継ぐと言い出して……。
・「若女将になりたい!」実家の旅館を継ぐために戻ってきた主人公。若女将になる気満々だが、現女将の母親は認めない。なぜなら主人公は、体は男性、中身は女性というトランスジェンダーだったから。
・「サラリーマンの父と娘」会社員の父親は単身赴任が長かったせいか、娘とすっかり距離ができてしまった。なんとか娘と気持ちを通わせたいのだが……。
★読みどころ1)さまざまな親子の形
親の意に沿わない仕事を選んだ息子の話あり、継いだはいいが苦労する娘の話あり、継がなかったことに罪悪感を感じている息子がいる一方で、継ぎたいのに継がせてくれない親がいる。さまざまな親子の形を出すことで、親と子のコミュニケーションのあり方を考えさせてくれる。
★読みどころ2)「継ぐ」のは仕事とは限らない
収録作には親の仕事を継いだ人もそうでない人も出てくるが、読んでいくうちに、仕事は継がなくても、他のいろんなものを子供は親から継いでいることがわかる。考え方だったり価値観だったり暮らし方だったり。そういったものを無意識のうちにでも受け継いだ子供が独り立ちしたなら、親と道は違っていても、それは立派な後継と言っていいのかも。
・親子の関係とは何かを綴った、温かい短編集。

田中兆子さんの『あとを継ぐ人』です。
光文社から1760円で販売中です。
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