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ヴィクター・メソス『弁護士ダニエル・ローリンズ』

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★内容紹介
・舞台はアメリカのユタ州、主人公は女性弁護士のダニエル・ローリンズ。物語の始まりは、ダニエルが二日酔いでふらふらしながら裁判所へ向かう場面。酔っているのを判事に叱られたり、有罪は免れない依頼者に「逃げちゃえ」とそそのかしたり。
・なぜ二日酔いだったかというと……ダニエルはバツイチだが、前の夫に未練たらたら。その夫が再婚を決めた、しかも相手はダニエルが大嫌いな女だったから。諦め切れないダニエルはふたりの新居を偵察したり、そこで前の夫と暮らす息子に出会って窘められたりと、コミカルでユーモラスに物語が始まる。ところが、ある夫婦がダニエルのもとに来たあたりから雲行きが変わる。
・夫婦の依頼は、息子の17歳のテディが麻薬密売の容疑で起訴された件。しかしテディにそんなことができるはずはない。なぜなら彼には知的障害があり、自分が置かれた状況すらわかっていないのだから。この夫妻は白人だが、黒人であるテディを生後三ヶ月で養子にし、障害がわかったあとも今日まで育ててきた。
・17歳の少年であること、知的障害があることから起訴は何かの間違いだと思ったダニエルは不起訴手続きをとろうとする。だがなぜか検察は異例の速さでテディを拘束、しかも少年裁判所ではなく成人として扱うという。さらに検察は裏から手を回して証言者を囲い込み、テディの知的障害も無視。ダニエルは判事に訴えるがけんもほろろ。いったい何が起きているのか?
★読みどころ1)実は、法と権力者についての小説
実は検察や判事ら権力者の側には、少年犯罪を厳罰化したいという思惑があった。それで黒人のテディを生贄、見せしめにして、法を変えようとしていた。そんな権力者たちに対し、ダニエルは、「あなたの気に入る法律だけが正しいんじゃない」と戦いを挑む。さらに、権力者に従わざるを得ない立場の人の中からも、自分の良心にしたがって声を上げる人も出てくる。
★読みどころ2)そんな重いテーマを扱いながらユーモアたっぷり
ダニエルのキャラクターが痛快かつ大人気なくてわらいどころがたくさん。周囲を取り巻く家族や仲間も魅力的で、重さと軽さのバランスが抜群。
・楽しく読みながらも、正義とは何か、法とは何か、
 権力に対し声をあげるとはどういうことかを考えさせてくれるミステリ。

ヴィクター・メソス『弁護士ダニエル・ローリンズ』
早川ミステリ文庫から1166円で販売中です。

 
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