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阿津川辰海『透明人間は密室に潜む』

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★内容紹介
・頭をきりきり絞って楽しむ謎解きミステリの短編集。四つの短編が収録されているが、どれもヒントや手がかりがフェアに提示され、ちゃんと推理すれば読者が探偵役より先に真相に到達することが可能。
・第一話は透明人間による犯罪計画、第二話はアイドルオタクの犯罪をめぐる裁判員裁判の法廷ミステリ、第三話は抜群に耳のいい探偵が盗聴の録音データから真相を推理するミステリ、そして第四話は豪華客船の中で脱出ゲームが開催され,その最中に誘拐事件が起きる、といったもの。どれもまったくタイプが違うが共通点としては、設定がどれも徹底的に作り込まれているということ
・例として第一話「透明人間は密室に潜む」透明人間になってしまう病気、透明人間病が発生した世界。透明なままでは不便なので、罹患した人は服を着て髪を染め、顔や手足にはファンデーションを塗る、つまり化粧をすることで自分の存在を可視化することが義務づけられている。
・この話の主人公は、ある大学教授の殺害を計画。化粧を取り、服を脱いで大学に侵入し、教授の研究室で無事に教授の殺害に成功する。ところがこの犯罪計画を知った探偵が、直後に研究室を封鎖。透明人間は透明なまま、部屋から出られなくなる。探偵は部屋の中で、見えない透明人間を捕まえることができるのか?──という話。
・このミステリのキモは、透明人間とはどういうものかという設定の作り込み。透明になるのは人体組織だけなので物を持てば存在がわかる。物を食べると消化吸収されてしまうまで消化途中の食べ物が空中に浮いて見える。さらに見えないだけで物体としては存在するので、人がぶつかることもあるし、足音もするし、ソファに座ればへこむ。汚れがつくとその汚れだけが宙に浮いて見える。こういう細かい設定の作り込みが、密室で透明人間を探すときの手がかりになる。
・他の三作も同様に設定が作り込まれている上に、収録作すべてまったく異なるタイプの謎解きミステリ。そのアクロバティックな展開を楽しむもよし、推理に挑戦するもよしの短編集。

阿津川辰海『透明人間は密室に潜む』
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