多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

昆布山葵『同じクラスに何かの主人公がいる』

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★内容紹介
・とある高校の一年生のクラスが舞台。このクラスにいる神宮寺流星という生徒は、実は正義の味方で、街の平和を守るため、いろんな特殊能力を駆使して、悪の組織と戦っている。それは秘密で他の人は誰も知らない。
・ただ、それに気付いているクラスメートがひとりいる。本書の語り手の二宮蒼汰。といっても普通に気付いているわけじゃない。まず、神宮寺のおかしな行動が気になった。たとえば授業中にいきなり「なっ……!? このエネルギーは……!?」などとわけのわからないことを叫び、「先生、わりぃ、急用!」と叫んで教室を飛び出す。そしてケガをして戻ってくるが、翌日にはケガは治っている。それに対して、教師もクラスの誰もつっこまない。
・二宮くんが考えるに、神宮寺の行動はいかにもバトルヒーローものの主人公っぽい。周囲が彼の不自然な行動をスルーしているのも、ヒーロー漫画や小説のお約束。どうやらこの世界は、神宮寺という正義のヒーローを主人公にしたバトルものの虚構の世界であり、自分は「主人公のクラスメート」という「その他大勢」のひとりなんだということに気付いた。二宮は実際に神宮寺が蟹の化け物と戦っているのを目撃するが、野次馬もいないし通報する人もいないことで、この仮説を確信する。
・二宮くんは戦いには興味がないので「その他大勢」のままでいたかったが、神宮寺の戦いを見ていたことが彼にばれてしまう。つまり「その他大勢」から「主人公の秘密を知るクラスメート」という重要キャラになってしまったため、彼を取り巻く状況が変わってくる。なんとか「その他大勢」に戻りたいのだが……。
★読みどころ)フィクションのお約束をパロディにして、とにかく笑える。
お約束でできているバトルヒーローものの中に、普通の感覚の人間がひとり混じっている、という状況。ヒーローものは、一歩引いて見るとおかしなセリフや設定がたくさんあって、それにいちいち二宮くんがツッコミを入れる。
・深読みすれば、人の役割って何だろうとか、運命は与えられるものか切り開くものかといったテーマとかも読み取れる。が、むしろそれより、虚構の世界のお約束に搦めとられまいと頑張る二宮くんに大笑いして読むのが楽しい。
・何も考えずすかっと笑える、パロディ満載の一冊。

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