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門井慶喜『東京、はじまる』

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★内容紹介
・建築家、辰野金吾の生涯を描いた歴史小説。東京駅、日本銀行本店、国会議事堂など、近代国家を象徴する建築物を次々と設計した。
・明治維新を成し遂げ、日本が近代国家としてスタートした時代が舞台。できたばかりの工部大学校(現・東京大学工学部)の第一期卒業生となった金吾はイギリスへ留学。帰国後、教授となるが、自分の手で、この新しい首都、東京の街を作りたいという夢を抱き、それを実現していく。
★読みどころ1)破天荒な金吾のキャラクター
資料と取材から浮かび上がる辰野金吾の人物像がすごい。俺が俺がと前に出るタイプ。彼が最初に手掛けた大仕事は明治15年に開業した日銀本店の設計だったが、実はすでに設計は御雇外国人のコンドルに内定していた。だが、どうしても自分でやりたい金吾は、無茶苦茶な手で「横取り」する。下級武士の出というコンプレックスがあり、上昇志向が強く、ぐいぐい来る性格で周囲を振り回すが、不思議と魅力的で憎めない。
★読みどころ2)近代建築のウンチク
著者の門井さんは歴史と建築に造詣が深く、近代建築の本も出している人。当時の技術の話はもちろん、日銀の地下に意外な仕掛けがあるとか、東京駅ができるまえは、あの場所に何があったかなど、興味深い情報が物語の中にたくさん登場し、目の前で建物が出来上がっていく臨場感がある。
★読みどころ3)辰野金吾の全盛期の後
成功した建築家の話というところで終わらず、その後、次第に金吾が時代遅れになっていくところまで描かれる。どんなに高みに上り詰めた人でも、いつか必ず時代に遅れる日は来る。その残酷さが描かれる。

・辰野金吾を、その才能だけでなく、近代国家の成長と合わせて描いた一冊。

門井慶喜『東京、はじまる』
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