多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

高木敦史『さよならが言えるその日まで』

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★内容紹介
・主人公は女子高校生の森遠伊緒。小学校の先生をしている父親・森遠謙介が、ある日突然、運転中に事故で亡くなってしまう。家族が悲嘆に暮れる中、驚愕の事実が判明。事故当日の未明から教え子の男子・恩田六助くんの行方が分からなくなっていたが、謙介の車から六助の痕跡が発見され、父が誘拐したと疑われてしまう。本人が死亡しているので事情聴取もできず、半ば、それが既成事実として報道される。マスコミや赤の他人からの非難・攻撃にさらされた伊緒は、父の汚名を注ぐためには行方不明のままの六助を探し出すしかないと決意する。
・一方、その頃、六助は、空き家になっている謙介先生の実家にいた。実はある事情があって六助は家に帰りたくなく、謙介先生に匿われていた。だがその先生が事故死したことを知らない六助は、その実家を出て、たまたま出会ったニートの青年の部屋に転がり込む。この青年、ニュースは知っているはずだが、なぜか六助に真実を伝えず、奇妙な共同生活が始まった……。
・果たして伊緒は六助を見つけ出せるのか。父の汚名は晴らせるのか。

★読みどころ1)自分勝手な「正義」の醜さ
父親が犯人にされてしまってから、あることないことが報じられるようになる。生徒に慕われるいい教師のはずだったのに、生徒に性的ないたずらをしていたとか、浮気していて別の家庭を持っていたとか、事実無根の噂がメディアに載るようになる。マスコミのレポーターは自分こそが正義の代弁者のように家族を責める。それを聞いた赤の他人が遺族に嫌がらせをし、ネットで悪口が書かれる。読んでいて胸糞悪くなるが、こういう行為が側から見るといかにみっともないかわかる。

★読みどころ2)家族とは何かを考えさせてくれる
読者には六助の居場所はわかっているし、父親が冤罪なのもわかっているので、見つけ出しさえすれば万事解決……のはずが、途中でどんどん意外な展開になる。その結果、伊緒は自分の家族のある秘密を知ってしまう。また、六助も、自分の家族のことで秘密を持っていた。家族を家族たらしめるものは何か、人は何をもって家族になるのか、を問いかけてくるミステリ。

・最後はとてもスッキリして終わる。最初は胸糞悪いが読後感のいいミステリ。

高木敦史『さよならが言えるその日まで』
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