多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

木下昌輝『炯眼に候』

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★内容紹介
・戦国時代の、織田の家臣たちを主人公にした短編集。だがちょっと変わっている。
・歴史小説のもとになるのは、当時の人が書き残した史料だが、複数の史料で矛盾があることも。なぜそんな矛盾する記録が残っているのかを、本格ミステリのように推理して解き明かした作品集。
・「偽首」桶狭間の戦いを描いた一編。今川義元の首をあげた人物の名前が、「信長公記」と「徳川実紀」で異なっている。それはなぜか、両方の史料が矛盾なく成立するとしたら何があったのかを解き明かす。
・「弾丸」信長狙撃という重大事件のあとで、犯人だけは処罰されたが妻子はお咎めなしで子孫が続いているのはなぜか。
・「鉄船」信長が九鬼水軍に作らせた鉄甲船が、資料によって大きさの記録がかなり違う。書き間違いではなくすべてが正しいとしたら……?
・特に秀逸なのが「軍師」。徹底した合理主義者である信長が、「お告げ」を信じた理由を推理する。この理由は現代の科学を知っている読者なら見当がつくかもしれないが、そこから先の展開が見事。
・最後は本能寺の変を描く「首級」。焼け跡から信長の首が見つからなかった理由を、アクロバッティックな論理で推理する。
★読みどころ1)一粒で三度美味しい短編集
どの話もどんでん返しや謎解きなど、ミステリとしてのサプライズがいっぱい。さらに主人公になった家臣たちのドラマも読ませるし、通して読めば、信長が天下統一に向けて進み、本能寺で撃たれるまでの一代記にもなっている。
★読みどころ2)普段読まないジャンルとの出会い
普段、自分の好きなジャンル以外にはあまり手が伸びない人もいるが、この物語はぜひミステリ好きの人に勧めたい。ジャンル違いでも意外なお宝がある、ということに気づくと、読書の幅が広がる。
・気軽に読める短編集なので、気ぜわしい年末の気分転換にどうぞ。

木下昌輝さんの『炯眼に候』

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