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太田満明『光秀夢幻』

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★内容紹介
・物語は本能寺の変の半年前。安土城の天守で、信長が半ば独り言のように「わしが公方(征夷大将軍)に取って代わるしかないか」と呟く。当時、すでに室町幕府は衰退していたが、いちおう足利義昭が第十五代将軍の座にあった。信長の言葉を聞いた光秀は、その真意はわからないまでも、上様が征夷大将軍になるのはアリだ、と考える。信長は軍人としては圧倒的だったが、いざ天下をとったとして、どんな政治をしたいのかが見えない。信長の機嫌一つで首が飛ぶので家臣も安心できない。将軍になれば幕府という政治システムを作ることになるので信長のビジョンもわかるし、自分は官僚に向いているので力を発揮できる。そこで光秀は信長が征夷大将軍を任命されるための朝廷工作を始める。
★読みどころ1)なぜ光秀は謀反を起こしたのか。
光秀の小説は大抵「なぜ謀反を起こしたのか」がテーマになることが多い。これまでの説だと、信長との対立や、義憤、他に黒幕がいたなど。だが本書はこれまでにない解釈をしているのがポイント。本書には信長と光秀が対立していたというようなエピソードはでてこない。
★読みどころ2)光秀の描写
従来の光秀のイメージは、真面目な優等生。本書でもそれはかわらないが、もっと人間らしい弱さが垣間見える。圧巻は本能寺の変の場面で、あの有名な「敵は本能寺にあり」を言わない。その場の光秀は、混乱し、悩み、虚脱している。なぜ謀反を起こしたかの理由にもかかわるので詳しくは言えないが、謀反を起こさざるを得なかった、追い詰められた光秀の様子がとても切ない。
・戦国時代の駆け引きと心理戦、そして夢が潰えた者の葛藤を描いた歴史小説。

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