多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

須賀しのぶさん『荒城に白百合ありて』

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★内容紹介
・幕末を舞台にした、薩摩藩士と会津の娘の恋愛小説。
・プロローグは戊辰戦争真っ只中。抗戦を続ける会津に薩摩軍が進軍してくる。そんな中、ある家の母親が、長男を逃したあと、姑と娘と自決しようとする。そこに下男が一通の手紙を持ってくる。それを読んだ母親は、自分はある場所に行かねばならない、と言う。いったい誰からの手紙だったのか?
・物語はそこから14年前の江戸に遡る。安政の大地震で多くの家屋が倒壊する中、ケガをしたひとりの少女が歩いているのを、薩摩藩の青年藩士・岡元伊織が助ける。その娘が江戸詰の会津藩士の娘、青垣鏡子。これが縁で伊織は青垣家に出入りするように。だが、時代が進むにつれ、会津と薩摩は敵味方に分かれることに……。
★読みどころ1)とてもストイックな恋愛小説
ふたりが惹かれあっているのは読者にはわかるが、いっこうに恋仲にならない。自分の気持ちに、当人たちは気づかない、あるいは気づかないふりをしている。(それはふたりに共通する、ある性格ゆえ。そこは読んでください)数少ない、ふたりが出会う場面には、ふたりの間に溝のようなものがって、お互いに絶対それを超えてはならないという悲壮なまでの意思すら感じられる。甘い会話も、ロマンティックな場面もまったくなし。気持ちを伝え合うことすらしないので、読者の方が焦ってくる。そのままふたりは、それぞれの役目──伊織は倒幕を目指す薩摩藩士として、鏡子は会津に嫁いで子を産み、家を守るという、それぞれの役目を果たそうとする。恋愛小説のはずなのに、いったいどうなるのか?
★読みどころ2)圧巻のクライマックス
恋人同士が敵味方に分かれるロミオとジュリエットのような話ではなく、それ以前の、自分に課せられた役割を守るが故に個人の気持ちをずっと抑えている状態。ずっと抑えていたものが、ラスト30ページで一気にほとばしる。この30ページはすごい!
戊辰戦争の悲劇を描いた歴史小説にして、触れれば切れるような恋愛小説。必読です。

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