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宮部みゆき『震える岩 霊験お初捕物控』

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★内容紹介
・主人公はまだ十代の娘、お初。彼女は時々幽霊を見たり、その場で起きた過去の出来事が見えたりという不思議な力を持つ。
・ある日、長屋で一度死んだはずの男が生き返るという事件が起きた。そこから物語は摩訶不思議な殺人事件へと発展する。犯人探しをする捕物帳でもあり、宮部みゆきらしい江戸の人々の生活が暖かく描かれる絶品の人情小説でもあります。
・中でも注目してほしいのが、実はこの話のメインは、忠臣蔵ということ。舞台は赤穂浪士の事件から約100年後。とある大名屋敷で、夜になると庭の岩が震えるという奇怪な現象が起きる。実はその大名屋敷とは陸奥一関藩の田村家。100年前に浅野内匠頭が切腹した庭の、まさにその場所にあった岩が震えるという。幽霊が見えるお初は、そこである男の霊を見る。赤穂の関係者なのか誰なのか……?そこでお初は赤穂事件について調べ始める。
★読みどころ:フィクションと史実の混同。
お初にとって赤穂事件とは、お芝居の忠臣蔵のこと。当時、歌舞伎やお芝居で赤穂事件をもとにした「忠臣蔵」が大人気だった。ただし幕府批判になってはいけないので、舞台を室町時代にし、人の名前も変え、さらに様々な創作エピソードを加えた。浅野が吉良に斬りかかったのも、吉良が浅野の妻に横恋慕したためという設定。庶民は赤穂事件がもとで大石内蔵助や吉良上野介のことだとわかって見ていたが、お初は、実際の刃傷の理由も、吉良の横恋慕だったと思い込んでいた。だが……。
・有名な歴史事件や歴史上の人物について今の私たちが知っていることが、実はドラマや小説の創作だったということは意外に多い。
・歴史小説は史実をもとにしているが、読者を楽しませるためにさまざまな脚色をしている。むしろ史実は変えずにどう脚色して史実と辻褄を合わせるかが歴史小説の面白さ。それを逆説的に証明してみせた一冊。

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