多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

米澤穂信『Iの悲劇』

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★内容紹介
・舞台は蓑石という山間の小さな集落。もともと世帯数が少なかった上に高齢化で、村を出たり亡くなったりでとうとう人口0になってしまった。この場所に人を呼び戻すため、市は、「Iターン支援プロジェクト」を発足。田舎に移住したいという人を募集し、空き家を格安で貸し出すことに。
・とりあえず数世帯が移住を決め、順次移り住んできたものの、いざ暮らし始めて見ると予想だにしないトラブルや事件が相次ぐ。
・市役所でこのプロジェクトの担当となった公務員の万願寺さんが主人公。やる気のない課長と、半分学生のような新人の3人の部署のため、何かあると万願寺が呼び出されることに。だが、移住者のトラブルはどれも一筋縄ではいかないものばかり。果たして一度滅んだ集落を再生できるのか?
★読みどころ1)住民トラブルがミステリ仕立て
隣接する2軒の間で騒音問題が発生。ところが騒音を出していた側がボヤを出して、村にいられなくなる。もう一軒にとってあまりに都合のいい展開だが?
…などなど、思わず笑っちゃうような間抜けな真相があったり、その一方でゾクリとするような謎解きがあったりと、ミステリのレベルが高い。
★読みどころ2)新参者たちと担当公務員の人間模様
それぞれ事情や夢を持って移住してきた人ばかりだが、そこにもやはり社会があり、自分の夢ばかりを優先させられない。また、みんな何かあればすぐに市役所の担当に話を持ち込むので、万願寺はそのため忙殺されることに。クレームの板挟みになる万願寺の公務員の苦労が身にしみる。
★読みどころ3)最後に衝撃の展開
詳しくは言えないが、最後まで読むと著者が本当に書きたかったことがわかる。ミステリの真相がそのまま社会への問題提起になっている。

ミステリを楽しんでいるといつのまにか現代社会の問題に直面させられる、
トリッキーな作品。

米澤穂信『I(アイ)の悲劇』
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