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山本兼一『火天の城』

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★内容紹介
・2004年の作品。安土城を作った大工の棟梁の物語。2009年映画化。
・舞台は信長の時代。熱田神宮の宮大工、岡部又右衛門は、信長から安土に城を建てるよう命じられる。ただの城ではなく、これまでに類を見ない五重の天守構造であり、しかも南蛮風にしろという命令。前代未聞の命令に、大工の血が騒ぐ。はたして城は建つのか?
★読みどころ1)戦国テクノクラート小説の面白さ
戦国小説だが合戦はまったく出てこず、ただ建築の様子を描く物語。だがそこには当時のプロの技術が詰まっていて、その情報だけで充分読ませる。複数の大工が信長の前でデザインコンペをしたり、大工だけではなく、石工や杣(そま・木こりのこと)、運搬業者など、それぞれのジャンルのプロが登場。印象的なのは、たとえ信長が相手であっても「できないものはできない」と言う。技術的には可能であっても、職人として「それをやってはいけない」ことには断固として抵抗する。なんでも受けるのがいい業者ではない、ということが伝わる。
★読みどころ2)建築中に起きた数々の難題
信長をよく思わない大名から忍びを使った妨害工作が入ったり、ライバル業者が邪魔をしてきたり。それを誠実なプロの技術で克服していく。圧巻なのは巨石を運ぶ場面で、実際に多くの人足が犠牲になった。木曽からヒノキの大木を運ぶときにも、川で杣が木に潰される。城は人の犠牲の上に建てられているということがよくわかる。
★読みどころ3)親子の物語。
又右衛門の長男は後継の自信があって、城くらい自分にも建てられると思っている。だがそのプライドを又右衛門は何度も粉々にする。親を越えようとする息子と、その息子を育てようとする親の、親子の物語も読み応え十分。
・岡部又右衛門は実在の人物で、熱田神宮のそばに生家跡の立て札がある。戦国時代は武将だけが戦ったのではない、とわかる一冊。

山本兼一『火天の城』
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