染井為人『震える天秤』

多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N / カルチャー
★内容紹介
主人公はフリーのジャーナリスト、俊藤(しゅんどう)。雑誌社からの依頼で、福井県で起きた交通事故を取材することになる。それは86歳の男性が運転する軽トラックがコンビニに突っ込み、店員が死亡したというもの。加害者はアクセルとブレーキを踏み間違えたと言っているが、認知症の疑いもあった。
高齢ドライバーの問題と、車がないと生活できない地方の現状についての記事を書くつもりだったが、取材するうちに、俊藤は違和感を覚える。加害者が住む村を訪ねたところ、村人たちの様子が何かを隠しているようで……。これは本当に、高齢だったがゆえの事故なのか?
★読みどころ1)高齢ドライバーの現実
現実に高齢ドライバーの事故は問題になっていて、免許返納を勧める動きもあるが、現実問題として返納は進まない。生活に困るという理由だけでなく、自分が運転もできないほど衰えたことを認めたくないという心理もある。車なしでどう生活するのか、人としての尊厳をどう扱うのか、その二点をなおざりにしたまま免許を返納しろとだけいうのはおかしい、という問題提起。自分だったらどうするか、自分の家族だったらどうするか、を考えてしまう。
★読みどころ2)ミステリとしての面白さ
そういう高齢ドライバーの実態を利用した殺人ではないのか、と俊藤は疑うが、高齢なのは確かなので証明できない。もし殺人だったとしたら、動機は何なのか。村人たちは何を隠しているのか。怪しいことはたくさんあるのに、それがつながらないもどかしさと、つながったときのカタルシスは一級品。
社会問題を扱いながら、ミステリとしてのエンターテインメントの興奮も味わえる一冊。

染井為人『震える天秤』

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