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東野圭吾『希望の糸』

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★内容紹介
プロローグから本編の序盤にかけて、みっつのエピソードが並行して語られる。
・ひとつは、ある家族の話。
小学生の娘と息子を地震で亡くした夫婦は、すっかり生きる意欲を失ってしまうが、また子供を作ろうと話し合って立ち直る。
・もうひとつは、金沢に住む女性の話。
年老いた父親が病気で余命わずかという段階で、弁護士から遺言書を見せられる。そこには、ごく普通の相続手続きの最後に、松宮脩平というまったく知らない人物の名前と、意外な一言が添えられていた。
・もうひとつは本編のメインになる東京での殺人事件の話。
カフェを経営する五十歳の女性が殺される。お金などは手付かずで強盗とは思えない。だが常連客や知り合いに聞いても「あんないい人が恨みを買うはずがない」と声を揃えて言う。刑事の松宮は手がかりを探そうと、被害者がかつて結婚していた元夫を尋ねるが……。
★読みどころ1)この三つの話が意外な形で絡んでくる。
2番目のエピソードの遺言書に出てきた松宮脩平と本筋の殺人事件を操作する松宮は同一人物。遺言書の件は殺人事件とは無関係だが、松宮が個人的に巻き込まれた遺言の一件と殺人事件が意外な形でシンクロしていく。そこに最初の、子供を産み直す決意をした夫婦の話が絡んで、「家族とは何か」という大きなテーマにつながる。殺人事件の犯人探しが物語のメインではなく、事件の背後に隠された家族の物語がメイン。詳しくは言えないが、みんなが誰かの幸せのために行動していたことがわかる感動的な話。
★読みどころ2)実は本書は人気シリーズのスピンオフ。
東野圭吾には、物理学者が探偵役となる「ガリレオシリーズ」と、刑事が主役の「加賀恭一郎シリーズ」というふたつの看板シリーズがある。今回、本のどこにも書かれていないが、実は加賀恭一郎シリーズのスピンオフ。主人公の松宮脩平刑事は加賀の従兄弟で、これまでの作品にもほぼレギュラーとして登場してきた。本書にも加賀恭一郎は脇役として登場する。最初、出版社は「読んだ人だけが気づくご褒美」として、加賀シリーズであることを伏せていた。けれど読んだ読者がネットなどに書き込んだことを受け、ツイッターで公表。
・加賀シリーズのファンは読み逃してはいけない一冊。

東野圭吾『希望の糸』
講談社から1836円で販売中です。
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