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小松エメル『一鬼夜行(いっきやこう)』シリーズ

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2008年に第1巻『一鬼夜行』が出て、現在も継続中の妖怪時代小説のシリーズ。今年3月に第11巻が出ています。
★内容紹介
舞台は明治五年。主人公はひとりで古道具屋を営んでいる青年、喜蔵(きぞう)。19歳だが強面で無愛想、30歳くらいに見える。人間嫌い。その喜蔵の家の庭に、少年が落ちてくる。名を小春というこの少年は、実は鬼で、百鬼夜行と呼ばれる妖怪たちの行列からはぐれて、地上に落ちてしまったという。百鬼夜行に戻れるまで同居させてほしい、ということで二人の生活が始まる。ところがそれから妖怪に絡んださまざまな事件が起きるようになり、喜蔵は否応なしに妖怪沙汰に巻き込まれていく──。
★読みどころ(1)妖怪との対比で描かれる成長物語
喜蔵には辛い過去があって、他人と関わることを拒んでいる。だが小春に引きずられて妖怪沙汰に手をだすうちに、少しずつ、人を信じることを思い出す。各巻にいろいろな妖怪が登場し、可愛かったりトンチキだったり、逆にすごく恐ろしかったりとさまざまだが、どの妖怪も悲しい過去や辛い過去があり、それが人間によって救われることもある。人間と妖怪を並べることで、別の種類の生き物が、ともに手を携えて生きて行くことの価値が描かれる。
★読みどころ(2)明治という舞台
妖怪小説は多いが、大部分が平安・江戸・昭和以降。それぞれの時代の妖怪には決まった使われ方がある(平安時代は怨霊、江戸時代は神、昭和以降は文明批判)。ところが明治というのは他に類がない。特にシリーズは明治5年に始まり、そこから数年時が流れているが、ちょうどいろんな文明や価値観が大きく変わった時代。古いものを否定し、妖怪なんていないという科学的思考が入ってきはじめた時代の妖怪がどう描かれているかが興味深い。

まだ継続中のシリーズなので、ぜひ追いかけてほしい。

小松エメル『一鬼夜行(いっきやこう)』シリーズ
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