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半村良さんの『どぶどろ』

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時代小説の名作だが、著者の半村良は決して時代小説専門ではなくSF作家。
いちばん有名なのは、何度も映像化された『戦国自衛隊』
★内容紹介
『どぶどろ』は1977年の作品。
構成が変わっていて、まずは独立した短編が七編、収録されている。
どれもその日を懸命に生きている庶民の日常を描いたもの。
その七編のあとに「どぶどろ」という長編が入っている。
これは銀座の町役人・岩瀬家で働く平吉という男が主人公。
気働きのできる男で、銀座で岡っ引きのような役目も担っている。
ある日、夜鳴きそば屋の老人が斬り殺されるという事件が起きた。
平吉はその背後に、自分が仕える岩瀬家が関わっているのではないかと疑念を抱く。
★読みどころ1)七つの短編に出てきた人々が、長編で再登場する
短編はまったく別の話で、つながりはない。
が、長編「どぶどろ」を読むとそれぞれの話のあとで何が起きたかが、この長編でひとつにまとまって描かれる。
単独で完成度が高い短編が、実は長編を構成するパーツだったという構成。

★読みどころ2)長編「どぶどろ」のテーマ
テーマはずばり、権力者が庶民をいとも簡単にひねりつぶす様子。
権力に翻弄される庶民たちが、その事件に巻き込まれるまで何を考え、どんな日々を送っていたかが短編で描かれている。
権力者が何の痛みも覚えず道具のように潰す庶民にも、こんな人生があった、という切なさややるせなさが伝わる。

★読みどころ3)読む年齢や時代によって感想が変わる。
後味が良くない、救いのない物語なので、若い頃はこの話は辛かった。
けれど歳をとるにつれて、登場人物たちは幸せだったのではないかと思えてくる。

・昭和を代表する時代ミステリーであり、時代を問わず、庶民として社会に対する問題意識を持つことの大切さを教えてくれる作品。

半村良(はんむら・りょう)さんの『どぶどろ』
廣済堂文庫・他から出版されていて、廣済堂文庫は920円で販売中です。
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