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寺地はるな『夜が暗いとはかぎらない』

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★内容紹介
・大阪近郊のとある街を舞台にした連作短編集。

・20ページほどの短い物語が20編収められている。どれも、生活の中に
 何らかの悩みや閉塞感を抱えた人たちの物語。たとえば、
 母一人子一人の過程で、社会人になった息子との会話が減ったことに悩む母親。
 幼稚園に通う娘が他の子供と比べて「ちゃんとしてない」ことに苛立つ母親。
 妻と巧くいってないところに、会社の部下の女性からアプローチされた男性。
 言葉の遅い孫とナーバスになっている嫁を心配する祖母。
 ピアノ教室をさぼってばかりの少女……などなど。

・あらゆる世代、あらゆる環境の老若男女を主人公にして、誰もが味わったことが
 あるような日常の悩みを描く。気が弱くてうまく話せないとか、
 周囲からのプレッシャーに潰されそうになっているとか、
 他人と比べて自分を責めたり、逆に虚勢を張って強がったり。
 そんななかで、ふとした出来事をきっかけに、主人公が一歩を踏み出す。

★読みどころ)すべて別々の話だが、実はゆるやかなつながりが2つある。
 ひとつは、その町のマーケットの着ぐるみ「あかつきん」の失踪事件。
 第一話で失踪した「あかつきん」は、その後の物語の中で時々目撃される。
 なぜかゴミを拾ったり酔っ払いを介抱したりという善行を積んでいる。これは何だ?
 もうひとつは、ある話の主人公が別の話に少しだけ登場する。
 自分が主人公の話では悩んだり困ったりしていた人が、別の話では、
 そうとは知らずにその話の主人公を助けていたりする。

・つまり、誰もが自分の人生では主人公だけど、同時に他人の人生の一部でもある、
 ということを本書は描いている。そして誰かの人生の一部になることで、
 その人を救うことがある。その連鎖の物語。

・自分も知らないところで誰かを助けているかもしれない、という気持ちになる一冊。

寺地はるな(てらち・はるな)さんの『夜が暗いとはかぎらない』
ポプラ社から1728円で販売中です。

 
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