多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

阿部智里『発現』

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★内容紹介
・平成30年と昭和40年の物語が交互に綴られる、ある家族の物語。
・平成30年、大学生の村岡さつきは、すでに結婚して家庭を持っている兄の様子が
 おかしいと聞かされる。どうも、見えるはずのない幻影が見えるらしい。
 ふたりの母が以前、同じ状態になり、そのまま亡くなってしまったため、
 さつきは父親と一緒に兄を心配するが……。
・昭和40年、地方で農家をしている山田省吾のもとに、東京で暮らす兄が
 亡くなったという連絡が入る。慌てて上京し、話を聞くと、どうも自分で
 高架橋から飛び降りたらしい。理由にまったく思い当たらない省吾は
 兄のことを調べようとするが、なぜか兄嫁はそれを止めようとする。
・このふたつの物語が、どう結びつくのか。さつきの母や兄が見ているものは
 何なのか。省吾の兄の死の真相は何なのか。
★読みどころ(1)2つの物語それぞれの謎
 二つの話が無関係であるはずはないが、まずはそれぞれの物語が単独で面白い。
 平成の方はホラーで、幻影そのものの怖さだけではなく、自分がだんだん
 おかしくなっていく自覚があることの現実的な怖さもある。
 昭和の方はミステリ。手がかりを探すうちに、少しずつヒントが見えてくるが
 最後に意外な展開が待っている。
★読みどころ(2)2つの物語がつながったときに浮かび上がるテーマ。
 最後まで読むと、実はこの物語が戦争の傷を描く
 骨太なテーマを持っていたことがわかる。
 作者の阿部さんはまだ二十代の若い作家。そんな若い世代が、あの戦争のどこに注目し、
 どう受け止めて、何を伝えなくてはならないかを考えた作品を、
 平成の終わりに届けてくれたことが頼もしい。
・若い作家の挑戦を、ぜひ味わってほしい。

阿部智里『発現』
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