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青崎有吾『早朝始発の殺風景』

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★内容紹介
・高校生を主人公にした青春ミステリの短編集。五編収録。
 どれも一幕もので、ほんの20分から30分程度の話。
 ふたりか三人の登場人物の会話だけで進み、その会話の中で生まれた
 違和感や謎の正体が推理され、明かされるという密室劇。

・第一話(表題作)は始発列車の中。主人公の男子高校生が学校に行くのに
 午前5時半の始発に乗ると、そこには同級生の女子が先に乗っていた。
 下の名前も思い出せない程度の、ふだんはほぼ付き合いのない相手で
 話題もないけど無視するのもおかしい、という気まずい状態。
 そんな中、お互いに「なぜこの人は始発に乗ってるのか」と疑問に思う。

・第二話は、放課後のファミレス。仲良し女子高生三人組が文化祭で着る
 Tシャツのデザインを決めようとするが、決まりかけていた案に、
 なぜかひとりが強硬に反対する。普段はこんな子じゃないのに……

・第三話は観覧車の中。男子高校生ふたりがひょんなことから一緒に
 観覧車に乗ることになるが、一周する間にある秘密を発見する。
 他に、公園のベンチでの会話や、クラスメートの家での会話など、
 どれも場面転換のないワンシチュエーションの中で展開される会話劇。

★読みどころ(1)意外な真相
 どれもはじめは些細な謎
 (なぜ始発に? なぜこっちのTシャツはいやなの?など)のはずが、
 最後には思わぬ結末に。会話の中の伏線だけで予想もしない真相に
 到達するロジックに驚かされる。

★読みどころ(2)気まずさの描写
 1、3、5話は親しくない相手とふたりだけになったという状況。
 2、4話は親しい間柄だけど言えないことがあるという状況。
 どちらもその気まずさの描写が見事。
 それだけでなく、その気まずさが20~30分の中で解消されていく。
 勇気を出しての一言や、相手を思いやる一言で
 人間関係は変わっていくという力強さが描かれている。

・謎解きの面白さに加え、気まずいのもいいなと思わせてくれる一冊。

青崎有吾さんの『早朝始発の殺風景』
集英社から1566円で販売中です。
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