多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

橋本治『桃尻語訳 枕草子』(上中下巻)

[この番組の画像一覧を見る]

★橋本治さん
1月29日に亡くなった橋本治さんは、1948年生まれ。
1977年に『桃尻娘』でデビュー、高校生の女の子のカジュアルで明るい語り口調で
ペラペラしゃべりまくる、とてもポップで現代的な物語で、いちやく人気作家に。
その後、純文学からエンタメ、評論、戯曲、古典の現代語訳など幅広く活躍してきた。

★内容紹介
紹介する『桃尻語訳 枕草子』は1987年の出版で、清少納言の「枕草子」を
現代語訳したもの。桃尻語訳、つまり小説『桃尻娘』の主人公が使っていたような、
80年代の若者言葉で枕草子を翻訳している。

★読みどころ1)めちゃくちゃ面白く、わかりやすい。
例「春はあけぼの」=春ってあけぼのよ! 「いとをかし」=「すっごく素敵!」
 「あわれ」=「ジーンと来る」 「わろし」=「ダサい」

★読みどころ2)実はかなり綿密に計算されたとても正確な現代語訳。
 普通、枕草子の現代語訳は、「春はあけぼの(夜明け)がいい」と書いている。
 しかし原典は「春はあけぼのこそよけれ」ではなく「あけぼの」で止めている。
 本人が書いていないことを、わかりやすさのために勝手に補足して
 訳すのはいかがなものか。
 勝手に変えてしまっては、エッセイそのものの風合いやノリといったものが
 消えてしまう。
 したがってこの本では、原文をすべて品詞分解し、
 ひとつずつ「正確に」現代語訳した。
 その結果、枕草子の意味ではなく、
 枕草子の世界(バリキャリのブログ)がちゃんと味わえる。

★読みどころ3)補足説明が素晴らしい
 現代語訳が現実に忠実になっている代わりに、ところどころで内容の説明が入る。
 これがすごくわかりやすい。当時の宮中の人間関係や服装、生活習慣など、
 そこらの参考書よりよっぽど詳しい。
 さらにそれも桃尻語なので、たとえば当時の服装「狩衣(かりぎぬ)」を、
 「狩衣ってのはスポーツウェアね。普段のときにきる直衣(のうし)が背広なら、
 狩衣は もっとくだけたブルゾン、ジャンパーの感じね」と説明。

・この本をきっかけに古典に興味を持ったり、枕草子原典に挑戦したりという人が増え、
 古典文学の普及に大きく貢献。後進の作家にも大きな影響を与えた偉大な作家でした。


橋本治『桃尻語訳 枕草子』(上中下巻)
河出文庫から上巻907円、中巻864円、下巻918円でそれぞれ販売中です。
関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報