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山本巧次『開化鐵道探偵 第一〇二列車の謎』

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明治時代を舞台にした鉄道ミステリ。以前紹介した『開化鉄道探偵』のシリーズ第二作。
★内容紹介
・今回の舞台は明治18年。上野と前橋を結ぶ日本鉄道に新設された大宮駅で、
 生糸を運んでいた第102列車が何者かの作為により脱線、
 積荷の中からあるはずのない千両箱が見つかった。
 鉄道局長はこの事件について、元八丁堀の同心・日下部に調査を依頼する。
 警察はこの千両箱を、幕末の要人・小栗上野介の隠し金ではないかと見ているらしい。
・草壁は助手の鉄道技師と一緒に、まずは荷物が積み込まれた高崎に向かうが、
 その途中で列車が爆弾騒ぎに巻き込まれたり、重要な人物が行方不明になったり、
 殺人が起きたり……。果たして脱線事件の犯人は誰なのか、千両箱は何なのか?
★読みどころ1)時代の過渡期の描写
 明治18年というと、近代化がどんどん進んでいた時期。自由民権運動も盛んだった。
 その一方で、生活に困る士族だとか、小栗上野介の徳川埋蔵金だとか、まだ江戸の
 名残が色濃い時期。江戸時代が遠くなる寂しさと、前に進むわくわくの両方が見事に
 描かれ、こういうふうに時代は少しずつ変わっていくというのがわかる。
 八丁堀同心が鉄道の事件を調査するという組み合わせがその象徴。
★読みどころ2)この時代の鉄道の様子
 日本鉄道とは何か、なぜ何もなかった大宮に駅が新設されたのか、
 脱線事故は分岐器(ポイント)で起きたが、どういう仕組みだったのか、
 当時の列車の編成はどうだったか(日本初のボギー客車が連結された)などなど、
 事件はフィクションだが、それ以外の鉄道の描写はかなり綿密に史実に則っている。
 特にラストシーンが秀逸。
★読みどころ3)本格ミステリとして面白い!
 この時代の、この場所の、この列車でないと成立しない謎解きが味わえる。
鉄道マニアにも歴史好きにもたまらない一冊。
山本巧次『開化鐵道探偵 第一〇二(ひゃくに)列車の謎』
東京創元社から1944円で販売中です。

 
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