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海老沢泰久『監督』

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1979年(昭和54年)の小説。

★内容紹介
・セ・リーグに所属する「エンゼルス」という架空の球団が舞台。
 エンゼルスは万年最下位で、この年も夏には首位ジャイアンツから26ゲーム差も
 離されての最下位。ついにオーナーは監督解任を決意、
ヘッドコーチの広岡達朗に監督就任を要請した。
広岡はそれまでのぬるま湯のようなチームを大幅に作り変え、
さまざなま妨害や問題を乗り越えて、奇跡の大逆転優勝を目指す。

★読みどころ1:現実と虚構の絶妙なブレンド
 エンゼルスは架空の球団だがモデルはあきらかにヤクルトスワローズ。
 広岡達朗もあきらかにあの広岡監督だが、あくまでも架空の人物。
 そしてエンゼルス以外のチームはすべて実名で登場し、選手も当時の実在の選手名。
 巨人の監督は長島で王や張本がクリーンナップを打ち、阪神では田淵、中日では星野が活躍。
 周辺を現実のチームや選手で固めることで、エンゼルスが架空でもリアリティが出る。
 しかもヤクルトは1976年にシーズン途中で広岡が監督に就任し、次の年は2位、
 三年目の1978年に球団創立以来初の優勝を飾った。本書刊行はその翌年3月。
 現実を物語に沿わせることで、本当にこんなことがあったかもしれないと思わせる。

★読みどころ2:でもあくまでもフィクションだからこその面白さ
 エンゼルスだけを架空にしたのは、ダメな選手や反抗的な選手がいたり、
 広岡監督の活躍を妬む人たちが妨害したりという悪事を書く必要があったから。
 ここにフィクションならではのドラマを入れることによって、実話では書けない、
 エンターテインメントとしての興奮が生まれている。
 ノンフィクションのリアリティと野球漫画の興奮が混じった感じ。

★読みどころ3:チームを作る、とはどういうことか。
 79年の作品なので、今の考え方とは違う部分も多いが、部下を率いる苦労や
 苦労が報われた喜びなどは今と共通。管理職小説として読める。
 新監督を応援したくなる名作野球小説。




 
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