多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

今村翔吾『童の神』

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★内容紹介
・舞台は平安時代中期。藤原氏による貴族政治全盛の時代で雅なイメージがあるが
  実は都を一歩出れば、まだ竪穴式住居に暮らす人々も残っていた。
  藤原氏は貴族政治に従わない都周辺の山々に暮らす先住民を弾圧、
  滝夜叉、土蜘蛛などと呼んで蔑み、武力をもって彼らから略奪を繰り返していた。
・その頃、越後の一族に男児が誕生、桜暁丸(おうきまる)と名付けられる。
 その一族を都の一軍が襲い、桜暁丸は家族と故郷を蹂躙される。
 都の人々に恨みを抱いた桜暁丸は復讐を決意。弾圧されていたさまざまな一族が
 彼のもとに集結し、京都の大江山、奈良の畝傍山などを拠点に、貴族に戦いを挑む。

・読みどころ(1)平安時代のオールスターが勢ぞろい
 安倍晴明に始まり、坂田金時、源頼光、渡辺綱など実在の人物から、滝夜叉姫など
伝説上の人物まで、どこか聞いたことのある名前が次々と登場。
最初はわからなくても途中から、この人物はもしかして有名なあの人では?
と気づくことも。
さまざまな能力を持った先住民たちが秘密兵器で都の軍と戦う様子は
実にエキサイティング。

・読みどころ(2)史実と伝説の大胆な再構築
 実際に起きた事件と、伝説として語り継がれる事件を混ぜ合わせて再構成している。
 すると伝説の裏側が見えてくる。当時、都の人が「鬼」と呼んでいたのは
 本物の鬼ではなく、政府の方針に従わない者や特別な能力を持つ者を排斥するため
 鬼と名付けていただけではないか、とか。

・読みどころ(3)背後に隠されたテーマ
 桜暁丸たちの軍と都の軍の戦いはとてもエキサイティングだが、
 テーマは差別される者たちの反逆。そこに生まれた、血統が違う、
 というだけで差別される人たちの悲しみが物語の底にある。

 めちゃくちゃ面白くて大興奮する冒険アクションでありながら、
 読み終わるとどこか悲しみが残る。

今年イチオシの、スケールの大きな伝奇歴史小説。

今村翔吾『童の神』

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