多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

翔田寛『人さらい』

2018年09月26日(水)

カルチャー
浜松市を舞台にした誘拐ミステリ。
著者はこの前に『真犯人』という誘拐ミステリを出しており、その舞台は静岡県裾野市。
それと同じ静岡県警の特殊班が出動する、シリーズ第二弾。
★内容紹介
・浜松市で小学校四年生の女の子が誘拐され、身代金要求の電話があったと
 静岡県警の特殊班に連絡が入る。特殊班のメンバーは管轄の浜松中央署に出向き、
 現地の警察官たちと一緒に捜査にあたる。
・誘拐犯は少女の母親に、一億円を赤い毛布に包んで荒縄で縛り、
JR
浜松駅南口のロータリーのタクシー乗り場に面した歩道に立っていろ、と指示。
警察は現場を囲んで犯人逮捕に備えたが、母親は犯人の指示で何度もタクシーを
乗り換え、警察を翻弄する。
しかもその間にいつの間にか身代金が奪われ、少女は遺体となって発見された。
・その残虐な犯行から、警察は、犯人は被害者の家庭に恨みを持つものの犯行では
 ないかと考え、周辺を捜査する。するとその背後にはあるドラマが……
・読みどころ(1)浜松の描写
 すべて実在の地名、地理がそのまま使われており、
特に浜松が身近な三河の人にとってはとてもよくわかる内容。
また、浜松まつりの凧揚げ合戦など浜松ならではの行事が事件にかかわってきて、
浜松ご当地ミステリとして読める。
・読みどころ(2)ミステリとしての面白さと背後の人間ドラマ
 母親を何度もタクシーに乗り換えさせた理由は何なのか、
身代金をどうやって奪ったのかというトリック、
その人が犯人だったのかという意外な真相などミステリとしての面白さは充分。
さらに、人をそこまで残虐な行動に駆り立てたものは何か、
という動機の部分に、他人事ではない恐ろしさがある。
舞台、トリック、動機という3つがそろった誘拐ミステリ。
シリーズ第一作の『真犯人』とセットで読むとなおよし。

翔田寛『人さらい』小学館から1620円で販売中です。
ちなみにシリーズ第一作の『真犯人』は小学館文庫から767円で販売中です。

 
関連記事
角田光代訳、紫式部『源氏物語』 西山ガラシャ『おから猫』 高森美由紀さんの『小田くん家は南部せんべい店』 畠中恵『まんまこと』シリーズ 水庭れん『うるうの朝顔』

番組最新情報