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松嶋智左(まつしま・ちさ)さんの『虚(うつろ)の聖域』

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サブタイトルは「梓凪子(あずさなぎこ)の調査報告書」。
女性私立探偵のハードボイルドで
「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」を受賞した著者のデビュー作。

★内容紹介
デパートの屋上から男子中学生が転落死。
状況から自殺と判断されたが遺書はなく、母親はいじめを疑い、
興信所に勤める妹に息子の死の真相を調べるよう依頼する。
この妹が主人公の梓凪子。
凪子は第一発見者や学校関係者、甥の友人らに話を聞くと同時に、
甥自身の出生についても調べ始める。
実は凪子の姉はシングルマザーで
甥の父親が誰かはきょうだいも知らなかったから。

調査をするうちに、どうやら
いじめがあったらしいということはわかったが、

どうもそれだけではなさそうで……

★読みどころ
(1)日本には珍しい女性探偵のハードボイルド。
ハードボイルドとは何か、という定義は難しいが、
一言でいうと「自分の信念を決して曲げない」主人公の物語。
権力に対抗する一匹オオカミとして描かれることが多く、
日本では大藪春彦や北方謙三、大沢在昌らが書いている。
本書はサブタイトルからシリーズ化を
視野に入れていると思われるので楽しみ。

(2)事件と並行して語られる主人公の問題
凪子はただ事件を調べるだけの役目ではなく、
凪子自身の問題も登場する。

調査を依頼して来た姉とは確執があって仲が悪い。
また、凪子は以前、警察に勤務していたが、
そこで不祥事を起こして退官した過去がある。

事情を抱えつつも弱音を吐かず、自分の信念を全うするヒロイン。
そういった凪子自身の問題が、物語にうまくスパイスとして効いてくる。
アクションあり駆け引きあり推理あり、意外な真相あり。
魅力的なヒロインの期待のシリーズ第一作。

松嶋智左(まつしま・ちさ)『虚(うつろ)の聖域』

講談社から1836円で販売中

 
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