名古屋おもてなし武将隊® 戦国音絵巻

前田慶次が織田信長に勝つ手段はただひとつ「便乗力」!

400年前より現代に蘇りし戦国武将の集団・名古屋おもてなし武将隊®が、ラジオ界の天下一を目指す番組『戦国音絵巻』。
6/4の"出陣"は、織田信長、前田慶次、陣笠隊の足軽・踊舞(とうま)です。

この日は「掛詞茶会(かけことばちゃかい)」第5回が開催されました。
戦国時代に数々の茶会で磨かれた、武将の言葉遊びの技術を披露してもらい、その"侘・寂"(わびさび)を堪能する企画です。

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ええ、最初からそのつもりでしたよ?

和歌などで使われるテクニック、掛詞。今風の言い方だと“ダジャレ”です。
これを茶の湯のように味わい、「結構なお点前(てまえ)で」と返す。茶葉の代わりに言の葉を使うという大変優雅な戯れとなっています

さて、本題に入る前に。

この「掛詞茶会」が行われる前には、「武士りく」というコーナーがありました。これは、武将隊の面々が、現世に蘇ってから聴いた曲の中から、心に響いた曲をかけるというもの。「武士のリクエスト」なので「武士りく」です。
この日採用された曲は、慶次のリクエストで松浦亜弥の「Yeah!めっちゃホリディ」。

慶次がこの曲を選んだ理由は2つ。
1つ目は、この日6月4日(旧暦)が慶次の命日であり、天に召されてからは毎日が“ホリディ”であったこと。2つ目は、この曲が心を高めるような、気持ちを鼓舞するような歌詞と旋律であること。

そして曲が流れた後、掛詞茶会がいざ開かれんとした時です。えまき~(音絵巻リスナー)から一通の矢文(メール)が届いたのでした。

「先ほどかかった『Yeah!めっちゃホリディ』。慶次様の命日ということで、“イエイ!”と“遺影”を掛けたのかと思ってしまいました」

「バレてしまったかー。こういうのは、自分から口にすることではない。気付いてしまったそなた、なかなかやるのう~ほっほっほっ!」と答える慶次。

「偶然」「便乗」などというツッコミは無粋というもの。ここは、そういうことにしておきましょう。

ちなみに、「チクショー!」と叫ぶコウメ太夫というお笑い芸人がいますよね。「コウメとチクショー。梅と竹、松。松竹梅が入ってる、計算された高度なネタでは?」とSNSで指摘されてネットで話題になったのですが、コウメ太夫本人は「狙いではなく、言われて気付いた」そうです。

400年前なら上手くやっていた?

では、進めていきます。最初のお題となる言葉は「梅雨」です。
早速、信長が掛詞を思い付きました。

「主(ぬし)、生誕日なんだってな?ハッピーバースデーツーユー」

踊舞「信長様、それはどういった意味でございましょうか?」
信長「伴天連語(西洋の言葉)で、生誕日を祝う時は『ハッピーバースデートゥーユー』と言うらしいが、最後はツーユーに聞こえるじゃろ?それに梅雨を合わせて、ハッピーバースデーツーユー」
慶次&踊舞「なるほどー。結構なお点前で」

カコーン。(ししおどしの音)

本来なら、ダジャレの説明をさせられるのはとーっても恥ずかしい行為なのですが、この掛詞茶会においては必要不可欠な作法。ワインのテイスティングのようなものです。

続いて、慶次が披露します。

「このきしめん、ツユツユじゃーっ!」

踊舞「慶次様、それはどういった意味でございましょうか?」
慶次「名古屋めしの名物、きしめん。平べったいうどんのようなもの。ツヤツヤしとらんか?」

静寂の間。

恐らく、信長に踊舞、スタッフ、ラジオの前のえまき~全員が、心の中でツッコんだことでしょう。
「ツヤツヤじゃなくてツルツルでしょっ!」と。

この記事をご覧の皆さんもお気付きだと思われますが、そうです。慶次はダジャレが苦手で、この企画ではテンパってしまうのです。
かつて400年前には、和歌や連歌などをたしなみ、武芸だけでなく文才にも長けていた慶次。長い年月の間に、言葉を操る能力に変化が生じてしまったようです。

実は高度なテクニック?

次は、えまき~が送ってきた言葉をお題に使います。その言葉とは「謀反」。
旧暦6月2日は本能寺の変があった日。家臣の明智光秀に謀反を起こされ、信長の命が絶たれたのでした。

ここも早速信長が名乗りを上げます。

「光秀が攻めて来たか。是非もなし(仕方がない)。火の手が上がって参った。煙も出てきた。うっ、ムホン、ムホン!

踊舞「信長様、それはどういった意味でございましょうか?」
信長「やはり本能寺と言えば、火の手が上がるということで、煙が出る。ということは、むせてしまう。それを、ゴホンゴホンではなく、ムホンムホン」

自らの最期を再現するという、究極の自虐ネタです。
すかさず慶次が披露します。

「踊舞!あんかけスパゲティー持ってきてくれ」
(踊舞、持ってくる演技をする)

「うむ。フゥ、フゥ、フゥ(息で麺を冷ます)。スーッ(すする)。ウッ、ムフッ、ムフッ、ムホン!」

踊舞「慶次様、どういった意味で、いや、どういった心持ちでございましょうか?」
信長「まさか?今、あんかけスパをすすって、むせて、そこで?」
慶次「ムホン、ムホンムホン、ムホン」
信長「なるほどー。結構なお点前…じゃないっ!盗みおったな!」

いくら苦手だとは言え、まさかまさかのパクリとは。
いいえ、これはお笑いの技術でいうところの“かぶせ”。相手のネタにあえて乗っかることで、笑いを生み出すテクニックです。慶次は狙って言ったのです。きっとそうです。そうだと信じてあげましょう。

消える魔球?

続いてのお題は「桔梗(ききょう)」。キキョウ科の多年生草本植物です。秋の七草の1つです。明智光秀の家紋・桔梗紋にデザインされています。

「はッ!来たぞおぉぉぉぉわしぃぃぃ!イーッヒッヒッヒッヒッ!」

突然、慶次が雄叫びを上げました。すごいネタが閃いたようです。ついに来たか、慶次覚醒の瞬間が!?

「よーし、参ろうかのぉ!……。………え?あれ?ちょっ、うわっ、忘れてもうた!」

な、なんと、前代未聞の展開です。

信長「嘘じゃろ!?」
踊舞「慶次様ぁ…。それはどういった意味でございましょうか?」

あきれ返る2人に対し、あまりの想定外な展開にタガが外れてしまった慶次は、トンチンカンな返事をします。

慶次「ウワッハ!そうじゃのう、“変化球”というヤツかのぉ。オッホッホッホッホ!」
踊舞「球が消えました」
慶次「そなたには消えて見えたか?」
信長「誰もが消えて見えたわ!むしろ、投げてない疑惑もあるからな」
慶次「“魔球”というヤツよ。ホッホッホッホ」

ホトトギスの鳴き声は

荒れたマウンドを整えるかのごとく、信長が直球を投げ込みます。

「何ッ、またしても光秀が攻めて来ただと!?よし、わしは尾張に帰る!そう、帰郷する!」

これぞお手本のような、ストレートな掛詞。更にもうひとネタ。そこに変化球を織り交ぜます。

「光秀が攻めて来たか。よし、わしはここに残る。お前ら(女中や家来)は脱出せよ。言うことを聞け。わしの言うことをキキョウ!」

ちょっとひねりをくわえたカーブのような掛詞ですね。

そんなバラエティに富んだ雅(みやび)な掛け合いに刺激されて、踊舞が参戦を申し出ました。足軽の参加は、掛詞茶会史上初です。

「やはり信長様は、『鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス』。ホトトギスも鳴いたことでしょう。ホーホキキョウ!」

信長「踊舞、それはどういったことじゃ?」
踊舞「この、ホトトギスの鳴き声“ホーホケキョ”を…」

と、言いかけたところで、ハッと気付く踊舞。ホーホケキョはウグイスの鳴き声であり、ホトトギスは“テッペンカケタカ”とか“トッキョトカキョク”と鳴くということに。

これはよく混同されやすく、勘違いする人も多い事例です。ホトトギスには、ウグイスの巣に卵を産み付け育ててもらう「托卵」という習性があるのも、混同される一因でしょう。

しっかり者とちゃっかり者

踊舞、失投をしてしまったかと思われましたが、そこに信長が助け船を出しました。

「本能寺は、仏教の『法華宗(ほっけしゅう)』という宗派なんじゃ。故に、本能寺で“ホーホッケキョ”が掛かっていたのだぞ。やるなあ、踊舞」

キキョウ→桔梗紋→明智光秀→本能寺→法華宗→ホーホケキョと、奇跡の繋がりがそこにあったのです。

信長「鳥の名前は間違えたかもしれんが、法華宗に掛かっていたということで、『こいつ、深いのう』とわしは感心いたした」
踊舞「ありがとうございます。そ、そうです、そうです」

「実は初めからそのつもりで狙って言ってました」的な受け答えをする踊舞。はて?このパターン、どこかで聞いたような…。

慶次「ようやく、わしのところまで辿り着いたな。入れてやろう、こっち側に」

“助け船”を出すのが信長ならば、“渡りに船”で便乗するのが慶次ですね。
ちゃっかりしたものです。茶会だけに。
カコーン。
(岡戸孝宏)
名古屋おもてなし武将隊® 戦国音絵巻
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2018年06月04日21時43分~抜粋

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