400年前より現代に蘇りし戦国武将の集団・名古屋おもてなし武将隊が、ラジオ界の天下一を目指す番組。
10/2の“出陣”は、織田信長、前田利家、陣笠隊の足軽・なつです。
今回は「第六天魔王の戦国大ギリ」の模様をお届けします。
“第六天魔王”とは、信長の異名。つまり、信長による大喜利です。
この企画では、えまき~(音絵巻リスナー)から送られてきた作品をなつが読み上げます。その出来栄えに合わせて信長が「大斬り」「中斬り」「小斬り」の3段階評価をしていきます。斬撃が大きいほど面白いというわけです。
織田信長の大喜利企画で、前田利家が一線を越えた!?
馬防柵を飛び越えた理由
今回のお題はこちら。
「前田利家が馬防柵(ばぼうさく)を飛び越えた、本当の理由は?」
まず、歴史的解説をしましょう。
戦国時代の天正3年5月21日(1575年6月29日)、三河国長篠城(現愛知県新城市長篠)をめぐり、3万8千の織田信長・徳川家康連合軍と、1万5千の武田勝頼の軍勢が戦った合戦。これが世にいう「長篠設楽原(ながしの したらがはら)の戦い」です。
天下無敵とうたわれた武田軍の騎馬隊。それらの馬を防ぐ柵、馬防柵を織田・徳川連合軍は作り上げ、その中から鉄砲で迎え撃ち、戦いを有利に進めたのでした。かの有名な鉄砲三段撃ち戦法が使われたのも、長篠の戦いと言われています。
して、当時の鉄砲は命中率がそれほど良くなかったため、騎馬隊をそのまま撃ち倒すのではなく、鉄砲の音で馬をビックリさせ、馬から落ちた敵を改めて直接攻撃するというのが、本当の馬防柵の作戦だったのです。
ところが、気がはやった利家が先走って馬防柵を飛び越え、敵を討ち取ろうとするもあえなく返り討ち。大ケガを負った上、家臣に助けられて一命を取り留めたという、ちょっと恥ずかしい逸話があるのでした。
バカウケ・ややウケ・ドッチラケ
そんな史実が元になった今回の大喜利、早速えまき~からの答えを紹介していきましょう。
まずはAさんからの矢文(メール)です。
なつ「利家様が馬防柵を飛び越えた本当の理由は?」
Aさんのネタ「厠(かわや)が、柵の向こうにあったから」
厠とはトイレのこと。「なにゆえわざわざ敵軍側に厠を作ったのか」と、信長はツッコミを述べます。
「もしくは、塹壕(ざんごう)という堀を作っておったから、そこを厠と勘違いして飛び込んだやもしれん。どちらにせよ、敵側に突っ込んだ又左(利家の別名)がアホだな。小斬り!」
(ガスッ…斬撃音)
小斬り。古い例えでいうなら『欽ドン!』での「バカウケ・ややウケ・ドッチラケ」のドッチラケなので、斬撃音も控えめです。
ちなみに、長篠の戦いで信長は、馬防柵や塹壕などを作り、戦を有利に進めました。こういう、お城以外の場所で工事を施して作った設備を「野戦築城」と言い、この戦法を用いたのは日本で信長が初だと言われています。
一線を越えた利家
続いてはBさんの矢文です。
なつ「利家様が馬防柵を飛び越えた本当の理由は?」
Bさんのネタ「震える子犬を見つけたから」
なんてハートフルな答えでしょう。思わず信長も利家も「素晴らしい!」と称賛します。
しかし信長の判定は…
「いや、中斬り!」(ザシュッ!)
ややウケの、まあまあの斬撃音でした。
その理由は「あまりにもキレイすぎるな。又左はそんな心の清い男ではないな」と、こちらはバッサリ斬り捨てる信長。
対して利家は必死に弁明します。「いえいえ、そういう男ですぞ!と、徳川、徳川様じゃない、信長様、ご無礼致しました!」
なんと、焦りのあまり主君の名前を間違えてしまう大失態。戦国時代なら本当に斬り捨てられます。
確かに長篠の戦いは織田・徳川連合軍ですが、直属の家臣が間違えてはなりません。馬防柵よりも越えてはならない一線を越えてしまいました。
信長の怒りをそらすべく、なつがすぐさま次の矢文を紹介します。
利家とまつ
なつ「利家様が馬防柵を飛び越えた本当の理由は?」
Cさんのネタ「先に柵を越えた前田慶次様が、姫君たちにモテモテなのを見てしまったから」
信長「フフフフ…。大斬り!」(キラーンザシュッ!)
出ました、激しい斬撃音。バカウケです。
前田慶次とは、利家の義理の甥で、“傾奇者(かぶきもの)”と言われる目立ちたがり屋の個性派武将です。
「実に又左らしい。『な、何でお主だけ!ふぉぉ、ふおおん!(鼻息)』とか悔しがって、行きそうじゃからな」と納得する信長。
しかし利家には「まつ」という、愛する妻がいます。他の女性にチヤホヤされようなどとは思わないから大丈夫と、利家は胸を張るのでした。
大喜利が続きます。
なつ「利家様が馬防柵を飛び越えた本当の理由は?」
Dさんのネタ「後ろから、怖い怖い嫁が追いかけてきたから」
信長「ンフフフフフ、大斬り!」(キラーンザシュッ)
そんな愛するまつが「そおれ、今だ、ほれ行け!」と容赦なく利家をけしかける姿を想像して、信長がはしゃぎます。
確かにまつは、美人でありながら肝の据わった強き女性だったと言われていますが・・・。
「これを大斬りにされると、拙者、前田家での立場が危なくなるので、小斬りにしてくだされ」という利家の懇願もむなしく響くばかりなのでした。
更なる高みを目指して…
最後の作品です。
なつ「利家様が馬防柵を飛び越えた本当の理由は?」
Eさんのネタ「より太陽に近づくため」
信長「フフフ、何かギリシャ神話のような…うーん、大斬りじゃな!」(キラーンザシュッ)
太陽に接近しすぎて、蝋(ろう)でできた翼が溶け墜落してしまったイカロスの神話に触れるとは。
戦国時代には西洋からいろんなものを取り入れていた信長、さすが物知りですね。
更に、このネタにはひとこと書き添えられていたらしく、信長がそれを見つけます。
「更なる高み(黒み)を目指して…」
これを読んで一同爆笑。
戦国時代では色白だったと言われている利家ですが、現世に蘇ってきた利家は、色黒なのです。
400年の時を超えてきていますから、肉体に多少の差異が発生してしまうのは仕方ないのですが、カメラの顔認識機能が反応しないほど、色黒なのです。
ジャンプすることで太陽に近づいて、少しでも色黒になろうとするなんて発想は、松崎しげるでも思いつかないでしょうね。
まるで馬防柵と鉄砲三段撃ちのような、ネタと追記コメントの二段構え攻撃にすっかりやられた信長なのでした。
(岡戸孝宏)
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