ジャーナリスト行方不明事件に世界が揺れ動く理由

丹野みどりのよりどりっ! / ニュース

サウジアラビア国籍の著名ジャーナリスト、ジャマル・カショギ記者が、トルコにあるサウジアラビアの総領事館の中で殺されたのではないかという疑惑が浮上しています。

10月17日放送の『丹野みどりのよりどりっ!』では、最新の情報とその背景となる国際関係について、石塚元章特別解説委員に伺いました。

消えたジャーナリスト

サウジアラビアからアメリカに移住していたジャマル・カショギ氏というジャーナリストが今月のはじめ、結婚の手続きで総領事館を訪れたところ、そのまま出てこなかったということです。
婚約者が外で待っていましたが、これはおかしいと、トルコ警察に通報しました。

総領事館、大使館は外交特権で守られており、トルコ警察と言えど勝手に中に入って捜査することはできません。トルコにあるサウジアラビア総領事館はサウジアラビアなんです。

サウジアラビア政府は、当初、「手続きをして帰った」と主張していました。
ところがそれを否定するような情報が次々と出てきました。

実は殺されている?

例えば、総領事館の外にある防犯カメラに入っていくカショギ氏は映っていますが、出てくるカショギ氏は映っていません。
同じ頃、サウジアラビアからプライベートジェットでトルコに入国した不審な男たちのグループが総領事館に入り、なぜか荷物を持って出てきて、サウジアラビアにとんぼ返りしましたた。

さらに、裏付けは取れていませんが、現地のメディアは、カショギ氏が拷問されたり、殺されたりする様子が、カショギ氏が身に着けていた通信機能をもった腕時計で外に音が送信されていて、その録音があるという報道までし始めています。

最新では、CNNもトルコの捜査当局者が総領事館の中を調べた結果、遺体が切断された証拠が出てきた、と報じ始めています。

サウジ政府も死亡を認める?

現段階ではそういった殺害を示す状況証拠がどんどん出てきています。

丹野「さすがにサウジアラビア政府も主張が変わってきましたね」

石塚「最初は、帰ったと言っていましたが、カショギ氏が総領事館の中で死亡したことは認める方向ではないかと言われています。

ただ、政府とか王室が指示をしたわけではない。尋問しようとしたスタッフが間違って死なせてしまったという報告書をまとめようとしているのでは?と言われています」

アメリカとトルコの立場

ここでサウジアラビアを取り巻く国際関係を確認しておきましょう。

まずアメリカ。トランプ政権は中東ではイランと仲が悪いです。イラン包囲網を築こうとしていますが、そのためには、大国であり中東で力を持つサウジの力を借りたいという思惑があります。
さらに、サウジアラビアはアメリカの武器を大量に買ってくれる上得意です。だから、なるべくサウジを責めたくはない。

しかし、ジャーナリスト殺害に対する疑惑ですから、議会でもちゃんと調べろという声が出てきています。中間選挙の前ですから、世論や議会の声を無視できないというトランプ大統領。
サウジアラビアの主張に沿う形で、事件は起きたらしいが政府や王室は関係ない、という形で収めたいと思っている節があります。

現場となったトルコとサウジアラビアとの関係は微妙です。現在のエルドアン大統領は、カタールやイスラム組織のムスリム同胞団を支持していますが、サウジアラビアはそれを批判しています。
サウジアラビアは産油国で経済的に裕福ですから、トルコとしては投資を期待したい。そのためトルコもトランプ政権と同様、サウジ王室とは関係ないという落としどころを見つけたいと見られています。

ムハンマド皇太子という人物

当事者であるサウジアラビアの事実上の最高権力者はムハンマド皇太子です。
女性に運転免許証を与えたり、原油を輸出して稼ぐことだけに頼らない国を作らないといけないという改革派と言われています。が、逆に強権発動するタイプで、反対する者は平気で拘束する、調べる人だという指摘もあります。

カショギ氏は別に王室と仲は悪くなかったが、ムハンマド皇太子のやり方を批判してきました。そのため、現在最も疑われているのはムハンマド皇太子黒幕説。あるいは、ムハンマド皇太子を批判する古いタイプの人もいるので、ムハンマド皇太子黒幕説を浮上させたい保守派守旧派黒幕説です。

そして尋問にあたった人物の中に、ムハンマド皇太子に非常に近いレベルの高い階級の当局者が含まれているのではと、CNNなどが報じ始めています。

ムハンマド体制へのマイナスの影響

サウジアラビアは世界最大の産油国ですから、石油にものを言わせて批判をかわしてきました。
ただここまで露骨な事件が出てくると、人権に敏感なヨーロッパ各国がサウジアラビアを厳しく批判し始めます。

サウジアラビアとの関係を深めようとしていた企業は様子見の姿勢をとるため、ムハンマド皇太子は石油に頼らない国を標ぼうし、海外からの投資が目当てとなります。こうなると、ムハンマド体制へのマイナスの影響も出てくるのではないかということです。

今回の事件に対してはミステリーじみた関心も高いですが、実は、その背景の複雑な国際関係も興味深いと思います。
(みず)
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2018年10月17日16時16分~抜粋

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