丹野みどりのよりどりっ!

日米会談から出てきたTAG(物品貿易協定)。TPP、FTAとどう違うの?

9月26日(日本時間27日未明)、安倍晋三首相はアメリカ・ニューヨークでトランプ米大統領と会談し、日米2国間の「物品貿易協定」(TAG)の交渉開始で合意しました。

このTAGという新しい言葉、日本の今後を考える上でとても重要なキーワードになりそうです。

ところが、貿易だけでもTPP、FTAなどの言葉もあり混乱します。その違いなどを整理しました。

28日の『丹野みどりのよりどりっ!』では、このTAGについてCBC論説室の石塚元章特別解説委員に話を伺いました。

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TAG(物品貿易協定)とは

石塚「TAGは頭文字をとっています。T…トレード(貿易)、A…アグリーメント(協定・合意)、G…グッズ(もの)ということでTrade Agreement on goods、訳すと物品貿易協定です。

日本時間の昨日、ニューヨークで安倍総理とトランプ大統領が日米首脳会談。その後に、日本とアメリカはTAGを結ぶために交渉を始めるということで合意した、との発表がありました」

丹野「TAGとはどういう協定でしょうか」

石塚「日本とアメリカの間で農産物・工業製品などの関税を話し合って決めましょうということです」

日本はTPP、米はFTAを主張

丹野「協議・協定ではFTAというのが今までありましたね」

石塚「ほぼ同じようなものではありますね。
FTAはFree Trade Agreement 自由貿易協定、これも関税の撤廃とか引き下げを話し合って決めていきましょうということです。
ほとんど同じようですが、日本はこれまで複数の国でまとめてFTAを結んでいくのがいいと主張し、太平洋をとりまく国々で貿易にまつわる協定をしてきていました」

丹野「それがTPP環太平洋パートナーシップ協定ですよね」

石塚「ところがトランプ大統領はアメリカ第一主義ですから、みんなで仲良くとか、複数の国で話し合うとか嫌いなんです。
オバマ大統領の時入っていたTPPから抜けました。トランプさんはとにかく貿易交渉は二国間でやるFTAがいいという考え方です。
その方が個別にいろんな事情で圧力をかけられるから、アメリカにとって都合のいい貿易協定に持ち込めるだろうという判断があると思います。

それに対して日本は従来は、みんなで多国間で決めていきましょうというのを主導していたわけです。
みんなでTPPという日本と、それぞれ二国間でやるFTAというアメリカと溝ができ始めていたわけです」

FTAとTAGは違う?

丹野「今回、FTAの二国間とTAGの二国間はどこが違うのですか」

石塚「今回TAGの二国間に日本はのったわけです。そこがポイントです。
今回、安倍総理はTAGはFTAじゃない、と言っています。
一方トランプ大統領は、逆のことを言っています。あんなに二国間のFTAはいやだと言っていた日本がついに折れた、私と話したら安倍くんは二国間の交渉FTAに応じたぞ、と」

丹野「トランプさんにとしてはFTAだろうが、TAGだろうが、二国間であれば言葉はどうでもいい。安倍総理はTPPの建前上、TAGとFTAは違います、というのを言い訳にしているような気がしますが…」

TAGはものの関税

丹野「どっちに有利でどっちに不利なんでしょう」

石塚「安倍総理はTAGはon goodsがついていて、ものの関税がテーマ。一般的にFTAはサービス分野の自由化、規制緩和も入っている、だから違うとおっしゃっています。
でも世界的なメディアはだいたい今回、トランプさんが言っているようなことを世界的に配信しています。

ただ、日本政府もつらい面があって、トランプ政権は自動車の関税を上げるぞと圧力をちらつかせながら、日本に迫ってきます。自動車に高い関税をかけられると、日本の貿貿易産業に大きなダメージがある。
だからと言って、FTAに応じたとなると、これまで言ってきたことと違うじゃないかと言われてしまう。だからTAGはFTAじゃないという大変苦しい説明をせざるをえないということです。

車への追加関税をアメリカがずっと言ってきましたが、今回、いったんその話はTAGの交渉をしている間は棚上げにしようということをアメリカから引き出しました。
しかし、あくまでもいったん棚上げでこの後どうなるか分かりません。ということで、それも含めて大変気になるTAGです」

丹野は「ちょっとトランプさんに握られている気がしますね」と、つらい安倍総理の立場を思いやりました。
(みず)
丹野みどりのよりどりっ!
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2018年09月28日16時19分~抜粋

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