今月12日、ウラジオストクで開催中の東方経済フォーラムで、ロシアのプーチン大統領が安倍晋三首相に対し、今年中に日本と平和条約を締結したいと提案しました。
両国には長年に渡る「北方領土問題」が手つかずのまま残っています。提案された平和条約に、この問題はどう絡むのでしょうか?
18日の『丹野みどりのよりどりっ!』では、この疑問についてCBC論説室の横地昭仁解説委員に尋ねました。
プーチン大統領が平和条約の呼びかけの真意は? イチから知ろう北方領土問題
江戸時代「四島は日本」
まず両国に残る「北方領土問題」についてです。
横地「北海道の根室沖、歯舞群島、国後島、択捉島、色丹島。もちろん日本は『我々の固有の領土で、ロシアが不法占拠している』と主張しているわけです。
歯舞は群島ですがひとつの塊として『北方四島』と呼びます。実は延長線上でずっと島々が連なっていてカムチャッカ半島までいっている、これをひっくるめて千島列島の一部になっています。
話は江戸時代、1855年、当時の江戸幕府とロシア帝国の間で条約が結ばれていて、この四島は日本である、その先のウルップ島はロシア帝国だと(決まった)。これがすべての出発点です。
そこから90年後、第二次世界大戦末期、1945年8月9日にソ連が対日参戦。終戦の8月15日以降、9月はじめにかけてこの四島を占拠して日本人を追い出し、今もその状態が続いています」
横地「北海道の根室沖、歯舞群島、国後島、択捉島、色丹島。もちろん日本は『我々の固有の領土で、ロシアが不法占拠している』と主張しているわけです。
歯舞は群島ですがひとつの塊として『北方四島』と呼びます。実は延長線上でずっと島々が連なっていてカムチャッカ半島までいっている、これをひっくるめて千島列島の一部になっています。
話は江戸時代、1855年、当時の江戸幕府とロシア帝国の間で条約が結ばれていて、この四島は日本である、その先のウルップ島はロシア帝国だと(決まった)。これがすべての出発点です。
そこから90年後、第二次世界大戦末期、1945年8月9日にソ連が対日参戦。終戦の8月15日以降、9月はじめにかけてこの四島を占拠して日本人を追い出し、今もその状態が続いています」
平和条約とは?
その問題が70年以上手つかずのまま、プーチン大統領が平和条約を提案しました。これはいったいどういうことでしょうか?
横地「これも第二次世界大戦の終結に絡む話です。8月15日が終戦の日になっていますが、これは天皇陛下の玉音放送で、ポツダム宣言を受け入れますよと言った日。正式に調印したのは、9月2日、戦艦ミズーリで行いました。これで日本が降伏しました。
国際社会に日本が復帰したのは1951年のサンフランシスコ講和条約です。この条約の正式名称は日本国との平和条約で、戦争状態を終わらせましょうということでした。
ところが、いくつかの国とは条約が締結されていなかった。実は、当時のソ連(現在のロシア)とはいまだに平和条約が締結されていません。
1956年に戦争状態が終わったという日ソ共同宣言はしていますが、それでもずっと平和条約が結ばれていない、いわば異常状態になっています」
横地「これも第二次世界大戦の終結に絡む話です。8月15日が終戦の日になっていますが、これは天皇陛下の玉音放送で、ポツダム宣言を受け入れますよと言った日。正式に調印したのは、9月2日、戦艦ミズーリで行いました。これで日本が降伏しました。
国際社会に日本が復帰したのは1951年のサンフランシスコ講和条約です。この条約の正式名称は日本国との平和条約で、戦争状態を終わらせましょうということでした。
ところが、いくつかの国とは条約が締結されていなかった。実は、当時のソ連(現在のロシア)とはいまだに平和条約が締結されていません。
1956年に戦争状態が終わったという日ソ共同宣言はしていますが、それでもずっと平和条約が結ばれていない、いわば異常状態になっています」
冷戦の時代
なぜそんな「異常状態」が長く続いているのでしょう?
横地「1951年に、講和条約と同時に日米安保を結んでいます。東西冷戦の時代で、日本はアメリカ側についた。だからソ連とは交渉がうまくいかないというのがあります。
また、講和条約の条文自体に、一時千島列島は全部が日本だったことがあり、その条約の中に千島列島は放棄しますと書いています。だから四島が含まれるかどうか、特に国後、択捉が含まれるかどうかは、ちょっとはっきりしないという説もあって、もやもやしていました」
横地「1951年に、講和条約と同時に日米安保を結んでいます。東西冷戦の時代で、日本はアメリカ側についた。だからソ連とは交渉がうまくいかないというのがあります。
また、講和条約の条文自体に、一時千島列島は全部が日本だったことがあり、その条約の中に千島列島は放棄しますと書いています。だから四島が含まれるかどうか、特に国後、択捉が含まれるかどうかは、ちょっとはっきりしないという説もあって、もやもやしていました」
東西冷戦から経済協力へ
ではなぜプーチン大統領は急に年内の平和条約締結を提案したのでしょうか?
横地「揺さぶり的という感じもしますよね。
ただ急に言いだしたように見えて、さっき言った1956年の日ソ共同宣言には、平和条約を締結したら四島のうち歯舞、色丹を先に日本に引き渡す…つまり順序が、島を返して平和条約じゃないみたいに書いてあって、プーチンさんも今回それを言っていました。
当時はまだソ連に戦争犯罪人として服役させられたままの方がいて、この人たちを早く日本に戻したいという状況もありました。軍事的な東西対立もありました。
その後は、エリツィンさんの時代になって経済協力しましょうと。プーチンさんと安倍さんの間でも話し合いが続いてきた。東西冷戦から経済協力という中での、東方経済フォーラムというところでのプーチンさんの発言だったということです」
横地「揺さぶり的という感じもしますよね。
ただ急に言いだしたように見えて、さっき言った1956年の日ソ共同宣言には、平和条約を締結したら四島のうち歯舞、色丹を先に日本に引き渡す…つまり順序が、島を返して平和条約じゃないみたいに書いてあって、プーチンさんも今回それを言っていました。
当時はまだソ連に戦争犯罪人として服役させられたままの方がいて、この人たちを早く日本に戻したいという状況もありました。軍事的な東西対立もありました。
その後は、エリツィンさんの時代になって経済協力しましょうと。プーチンさんと安倍さんの間でも話し合いが続いてきた。東西冷戦から経済協力という中での、東方経済フォーラムというところでのプーチンさんの発言だったということです」
プーチンさんのくせ球
つまり、ロシアの本心としては経済協力を求めたいということでしょうか?
横地「それは大きいです。
島といいますが、四島の面積を合わせると、だいたい愛知県と三重県くらいの面積です。しかも海の資源が豊富です。そこをどうやって開発していくかは、ロシア一国ではできないので、安倍さんもこれまでずっとプーチンさんとの話し合いの中で経済協力を前面に出してきたということがあって、それで今回の発言ということがあります。
もうひとつ、軍事、安全保障の面で、ロシアも存在感を高めています。特に択捉島のあたりは、海も空も守るという面では非常に重要になってきています。
そうした中での今回はくせ球かな。日本としてこのくせ球をどう返していくか、というのが総裁選の大きな論点でもあると思います」
(みず)
横地「それは大きいです。
島といいますが、四島の面積を合わせると、だいたい愛知県と三重県くらいの面積です。しかも海の資源が豊富です。そこをどうやって開発していくかは、ロシア一国ではできないので、安倍さんもこれまでずっとプーチンさんとの話し合いの中で経済協力を前面に出してきたということがあって、それで今回の発言ということがあります。
もうひとつ、軍事、安全保障の面で、ロシアも存在感を高めています。特に択捉島のあたりは、海も空も守るという面では非常に重要になってきています。
そうした中での今回はくせ球かな。日本としてこのくせ球をどう返していくか、というのが総裁選の大きな論点でもあると思います」
(みず)
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