丹野みどりのよりどりっ!

ネクタイが斜めに裁断されている理由

9/18の『丹野みどりのよりどりっ!』では、Aさんからいただいたこんな疑問を解決しました。

「どうしてネクタイは、斜めに裁断されているの?」

ネクタイは生地を斜めに裁断して作られているのですが、皆さんご存知だったでしょうか?どうして、斜めに切る必要があるのか、その理由に今回は迫りたいと思います。

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今回の回答者

「どうしてネクタイは、斜めに裁断されているの?」というキニナルについて、東京ネクタイ協同組合の鈴木民夫さんにお答えいただきました。

東京ネクタイ協同組合は、ネクタイの普及、ネクタイ文化の発展の為に様々な活動を行っている、今年設立70周年を迎えた組合です。
毎年ベストネクタイストの選出を行ない、表彰を行ったりもしています。

ちなみに昨年、シンガーソングライターの中村千尋さんとのコラボレーションでネクタイ応援ソング「ネクタイしようぜ」を製作し、YouTubeで見ることが出来ます。

ネクタイが斜めに裁断されている理由

まずは今回の質問に行く前に、まずはネクタイがどのようにして作られているのか聞いてみました。

鈴木さん「ネクタイ生地はネクタイ専門の染工場で糸を染め、ネクタイ専門の織工場で生地を織り、ネクタイ専門の縫製工場でネクタイに仕上げます。企画、製造、販売に至るまで一貫した流れの中でモノ作りが行われている歴史のある洋装品です。
そして今回のご質問にもありましたように、生地からネクタイを作る時には、斜めに生地を裁断しております」

丹野「そうなんですね。では、どうしてネクタイは斜めに裁断して作られているのですか?」

鈴木さん「生地を斜め(バイアス)に使用してネクタイを作るのには使用上、着用上の大きな理由があります。斜めに生地を使うことにより、ネクタイが程良く伸び縮みして、ネクタイを着用しやすく(締めやすく)、また着用した後の首の動きに合わせて適度に緩む性質をネクタイに機能として与えられるからです」

丹野「伸び縮みの柔らかさが必要になってくるわけですね」

鈴木さん「そうですね。さらには、織り上げたネクタイ用の生地から斜めに生地取りをしていくと、縦横に生地取りをするよりも無駄な部分(端布)を少なく取ることが出来ます。斜めに取ることは、一石二鳥なわけです」

ネクタイを使う人にも、作る人にもメリットがある作り方だったわけですね。ちなみに縦横に生地を取ったネクタイだと柔軟性がなく、締まりすぎてしまうこともあるんだそうです。

ネクタイの歴史

今では、ネクタイをすることは普通ですが、そもそもいつからネクタイができ、使われるようになったのでしょうか。この疑問も聞いてみました。
 
鈴木さん「ネクタイの歴史は古く、ローマ時代に戦いに向かう兵士の家族(女性)が自分の腰布を千切り、武運長久を祈り、お守り代わりに兵士の首に巻き付けたという話が伝わっています」

丹野「家族からのお守りだったんですね!」

鈴木さん「より明確にわかっている話としては、フランスの太陽王ルイ14世の時代、国王の身辺警護の近衛兵をクロアチアの傭兵で組織しており、その近衛兵達が首に巻いていた所属、階級、家紋を表す目印であるスカーフをルイ14世が大変気に入り、わざわざ作らせ自ら着用したことから流行して、その後ネクタイとして定着し、その起源となったということです。
クロアチアの兵士たちが巻いていた布も、妻子や恋人からのお守りであったらしく、時代を隔てても愛する者への人の思いは変わらないといえるかもしれませんね」

日本のネクタイ史

丹野「日本にはどのように入ってきたのですか?」

鈴木さん「日本での歴史は、土佐の漁師だったジョン(中浜)万次郎がアメリカから帰国する際に所持していた記録に残る3本のネクタイから始まると言われています。明治になり舶来のネクタイが東京の日本橋辺りで販売されだし、時間を置かずに帽子製造業の小山梅吉が見よう見まねで蝶ネクタイを作り始めたのが国産ネクタイ第一号となります。この国産ネクタイが発売された1884年10月1日にちなみ、日本ネクタイ組合連合会では1971年(昭和46年)に同じ日を『ネクタイの日』として制定しました」

丹野「ということは、国産第一号のネクタイは蝶ネクタイだったということですね?」

ネクタイの起源となったスカーフが所属や階級を表していたというのは、戦の多かった当時を物語っています。また、幕末に多くの人達に影響を与えたジョン万次郎が、ネクタイを初めて日本に持ち込んだというのも興味深い話です。

ネクタイ選びのポイント

ビジネスの場では、ネクタイをする場面が多いはず。どんなネクタイを選んだらいいのか、どのように手入れをしていったらいいのか、聞いてみました。

鈴木さん「ネクタイは男性ファッションの中で要となるマストアイテムです。選ぶ色によってその日、その時の気分も表現、演出することが出来ます。心を映す小道具と言えるかもしれません。

トータルコーディネートを考える時に、海外ではネクタイをしないスーツ姿はありえません。万国共通で、ネクタイを楽しむ方はファッション全体の味付けを整える調味料としてネクタイをとらえている方が多いのではないでしょうか。
装い全体の中での差し色として、バランスを取る為にネクタイを使用し、元気を出したい時、ハレを強調したい時、個性を際立たせたい時、または慎ましさを演出したい時などそれに合わせた色、柄の強弱を選ばれたらよろしいかと思います」

お手入れについて

丹野「お手入れに関してアドバイスはありますか?」

鈴木さん「お手入れに関しては、まずは汚さないこと、そして洗わなければならないようにしないことが重要です。
市販の撥水加工を施す為のスプレーを全体に吹き付け、完璧ではなくとも水、油などからネクタイを守ってあげるような事をしてあげれば、ネクタイに対する愛着もさらに深くなることと思います。

高価なネクタイであればある程、非常に繊細な織、そして作りをしています。素材もほとんどの場合正絹ですので、汚してしまった場合には、信頼のおける、専門知識と技術のあるドライクリーニング店に出すようにしてください。
着用後のしわ伸ばし等はスチームアイロンのスチームだけを浮かしてかける程度にして、その後陰干しをしてください。アイロンは絶対にかけないようにしてください。ネクタイの風合いが全て損なわれてしまいます。しわと共に汚れが付いた場合は、プロの手に委ねるのが賢明です」

丹野「直接アイロンをかけてしまうと、ネクタイのふっくらした感じがなくなってしまいますもんね。」

今日のお話を聞いていると、ネクタイは非常に繊細で歴史のあるアイテムなんだとよくわかります。自分の個性を出すのも良し、自分の気分を表すのも良し。そんな魅力あふれるネクタイを自分なりに楽しんでみると面白いかもしれませんね。
(おきな)
丹野みどりのよりどりっ!
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2018年09月18日16時37分~抜粋

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