丹野みどりのよりどりっ!

非常口の誘導灯が緑色である理由

先日友だちと映画を見に、映画館に行ったAさん。
上映前に明かりが消え暗くなった時に、非常口の誘導灯が緑色に光っているのが目に付いたそう。
赤色や黄色など目立つ色はもっと他にもあるはずなのに、どうして緑色なの?という疑問を持ちました。

そんなAさんの疑問を解決すべく、今回は「非常口の誘導灯」についてのキニナルを調査しました。

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今回の回答者

「非常口の誘導灯が緑色なのはなぜ?」というキニナルについて、一般社団法人日本照明工業会認証部担当部長の田中吉郎さんにお答えいただきました。

一般社団法人日本照明工業会は、照明用の光源や材料、点灯装置、照明器具などの製造・販売を行う事業者や関連団体を会員としている団体です。照明業界の発展や振興、国民生活における安全性の確保、生活文化の向上に寄与することを目的に、より良い「あかり」文化や、環境に配慮した省エネ製品を普及させる事業を行っています。

非常口の誘導灯が緑色である理由

早速本題である、「非常口の誘導灯が緑色なのはなぜ?」という疑問にお答えいただきました。
 
田中さん「緑色なのは、心を落ち着かせる効果を持つ『安全色』だからです。緑色は『心を落ち着かせる色』『安全を表示する色』として昔から使われており、国内的にはJIS、国際的にはISO等の規格にも安全色として規定されています。

緑色が安全色で使われている例としては、例えば工事作業所などに昔から立てられている緑十字の旗などがあります。このような観点から誘導灯の表示面も緑色になっています。

アメリカなどの国では、一部赤色の誘導灯が使われているところもありますが、年々緑色に変更されてきています。なお、赤色は『刺激色』なので気付きやすい反面、火災時には炎と見誤る恐れがあります」

いざ避難するときに誘導灯としての役割を果たすのに適した色が、緑色だったわけですね。普段から誘導灯を目にする機会は多いので、派手な色よりも緑色のほうが景観も損なわずに済むのかもしれません。

誘導灯に描かれている“人”

非常口の誘導灯といえば、緑色の“人”が扉に向かっている姿が思い浮かぶと思います。あの"人"の形にも決まりがあるのか聞いてみました。

田中さん「まず、誘導灯に描かれているあの"人"の形をしたもののことを、絵文字=ピクトグラムと呼びます。このピクトグラムは、ISO(国際標準化機構)という規格で国際的に決められているもので、世界各国でもほぼ同じ形になっています。

ピクトグラムの向きや、矢印の有無など誘導灯によってデザインは多少異なる場合もありますが、基本的には同じです。
日本では、消防法施行規則の『誘導灯及び誘導標識の基準』において『避難口であることを示すシンボル』としてシンボルの色彩、シンボルの地の色、寸法などが細かく規定されています」

"人"の形だけでなく、地の色やサイズなどもすべて規則で決められているんですね。同じ緑色でも、色の濃さや明るさには幅がありますから、このように規則で決められているのには納得です。

今のデザインに行きつくまでの過程

誘導灯のデザインがどのような経緯で、あの形になったのか。そして、誰があのデザインを考えたのかについても聞いてみました。

田中さん「1978年に、財団法人日本消防設備安全センターに防災システム研究委員会が設置されました。その下に避難誘導システム分科会という組織が設けられ、そこで誘導灯の表示面をピクトグラム化する研究が行われました。

その委員会でピクトグラムの一般公募が行われ、入選作の選定には子供や外国人にも非常口であることが瞬時にして連想できるもの、また、遠くからや煙の充満している中でも分かるような図柄が得られるよう、5種類の科学的なテストを行いました。

入選作は、これらのテストの総合点で決められ、当時埼玉県在住でデザイナーの小谷松敏文氏のデザインが選ばれました。そのデザインをグラフィックデザイナーの太田幸夫氏が改良し、現在のマークのデザインが作られました。
そしてこのピクトグラムを消防庁が1982年1月より採用したことで、今に至ります」

今のデザインは一般公募で選ばれたものだったんですね。誰がいつ見ても非常口だと分かるものとして、勝ち抜いたものが今のデザインというわけです。

実は、日本生まれのピクトグラムが世界でも使われている?

これまでのお話の中で、海外の誘導灯でも日本と同様のピクトグラムが使われているというお話がありました。

ということは、日本で生まれたピクトグラムが海外でも採用されているということなのでしょうか?この質問にもお答えいただきました。

田中さん「はい、そうです。日本で使われているピクトグラムを国際的なものにするために、国際規格を決めているISO(国際標準化機構)事務局に提案を行いました。
実際に行った実験結果などをもとに説明を続けた結果、1987年8月に日本のピクトグラムが世界標準のデザインとして正式に採用され、今のようなピクトグラムが世界的に使われるようになりました」

日本で生まれたピクトグラムが世界標準として使われているのは、とてもうれしいことですね。是非海外に行かれる際には、誘導灯のデザインがどんなものか見てみてください。
(おきな)
丹野みどりのよりどりっ!
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2018年08月28日16時39分~抜粋

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