丹野みどりのよりどりっ!

名古屋城の木造復元計画に「待った!」2022年末完成予定に黄信号

7月13日放送『丹野みどりのよりどりっ!』では、「名古屋城天守閣の木造復元計画に大きな動き」という話題を取りあげました。

河村たかし名古屋市長が旗振り役となって、木造の天守閣を2022年末までに完成させる計画なのですが、どうやらその完成時期が、かなり厳しくなってきたようなのです。
今回はCBC論説室の石塚元章特別解説委員が、現在の状況などについて解説しました。

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木造復元は観光と耐震のため

まずは建設を巡るこれまでの動きについて、おさらいします。

2009年、選挙に当選した河村市長は、当時から天守閣の木造復元構想を掲げています。

名古屋城の天守閣は、1945年(昭和20年)に太平洋戦争の空襲で焼けて失くなったのですが、戦後に市民などからの寄付を集めて、1959年(昭和34年)にコンクリート造りの天守閣が完成しました。

その後、老朽化や耐震性の問題もあり、再建の必要性が出てきました。
もちろん、今の建物に対して耐震工事をするという選択肢もあるのですが、観光のためには昔のまま木造にした方が良いという考えもあって、新たに木造で建築し直そうというわけです。

エレベータと石垣問題

ただ、木造への復元に対して、いくつか議論されている問題点があります。

まずは最近よく言われているエレベーターの設置問題。
エレベーターを設置してしまうと、完全な復元にはならない(1612年当時は、当然エレベーターは存在しないため)という意見の一方で、高齢の方や障がいのある方は、上まで登れない場合もあるため、設置すべきという意見もあります。

河村市長は、代わりに登る手段としてロボットやパワースーツを挙げているそうですが、現時点ではあまり現実味がない提案のように見受けられます。

もう一つ、問題となっているのが石垣問題。
名古屋城の天守閣は焼け落ちて失くなっているのですが、石垣は残っているため、それを守る必要があります。
文化庁からも「きちんと石垣の保存方法を具体的に示さない限りは、天守閣の木造復元は認めない」と指摘されているとのことです。

その指摘を受けて、名古屋市は石垣の保全方針をまとめているのですが、その方針について、13日に名古屋市で開かれる有識者会議で認められるかどうかが注目されていました。

今の天守閣にも価値がある

会議の結論は「石垣の劣化が進んでいるのに、この調査内容では不十分」となったため、計画の見直しが必要となり、2022年末の完成はかなり厳しくなってきました。

では、不十分とされた根拠は何でしょうか。石塚委員がポイントを解説します。

歴史的な建物を残していくのは大きなテーマであり、思いつきや選挙でウケが良さそうといった理由で実施するものではありませんが、名古屋城を巡るさまざまな問題点を十分に検討していないという点で、不十分とされています。

また、お城の復元と言えば、姫路城や犬山城でも行われていますが、こちらは元々の天守閣が無事に残っていますので、何とか残そうという意味があります。

一方、現在の名古屋城は戦後、「焼けて失くならないように」という市民の思いや、当時の技術の粋を集めてコンクリート造にして作った建築物であり、今の天守閣にも歴史的な意味合いがあるのではないか、それを壊すことが良いことなのかという考えもあります。

今後も計画について、納得が行くような説明を市民にする必要があり、そこまで木造復元を急ぐ必要があるのか、もう一度立ち止まって考え直す必要がありそうです。
(岡本)
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2018年07月13日16時16分~抜粋

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