丹野みどりのよりどりっ!

睡眠時無呼吸症候群は日本人の悲しい運命?

肥満のために呼吸がうまくできず、寝てる間に息が止まってしまうことがあります。これが睡眠時無呼吸症候群です。
こうなると、ちゃんとした睡眠がとれず、昼間でもうとうとと寝てしまい、身体への影響を及ぼします。

6月6日『丹野みどりのよりどりっ!』では、名古屋市立大学病院睡眠医療センター長の中山明峰先生にお話を伺いました。
この病気は、肥満の人がなりやすいと言われていたのですが、意外にも日本人の場合はその限りではないそうです。

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昔は存在しなかった病気

「睡眠時無呼吸症候群という病名を、ほとんどの方がご存知かと思います。しかし昔はなかった病名なんです。これは私たちの文化的な背景に伴った出てきた新しい病気です。特に肥満とともに注目されてきました」と山中先生は言います。

とは言え、睡眠時無呼吸症候群が注目されてきたのは、肥満と直接関係しているわけではありません。

交通事故など様々な事故の原因のひとつとして、昼に眠ってしまうことが注目されるようになりました。
その睡眠の引き金が、肥満の人に多い睡眠時無呼吸症候群だとわかり、現在はしっかり治さなければいけない病気だと言われるようになったのです。

いびきの危険なパターンはこれ

「実は寝ている間に、私たち全員、息が止まるんですよ。1時間あたり5回ぐらい止まってもどうってことはないんです。ですから10分に1回、息が止まっても全然びっくりすることはありません」

しかし、非常に強い無呼吸を起こすと、息を吹き返す時に大きないびきをします。これは無呼吸から解放される時の救急の呼吸なんだそうです。長い時間沈黙した後に、ンガーッという息は、人工呼吸をしてることと全く同じ状態ということです。

規則正しくゴーゴーと呼吸に合わせてやってるいびきはうるさくても大丈夫。
息が止まった長い沈黙の後、ンガーッとなるのは要注意。

「そのパターンは非常に危険なパターンですね」

何回呼吸が止まるとダメ?

寝ている間の呼吸が何回以上、もしくは何秒以上止まると危ないという目安はあるんですか?

「5回以下でしたら気にすることはありません。5回から15回の方は、まだ軽症です。軽症の方は少し寝返りを打ってみたり、少しマウスピース使ってみたり、耳鼻科に相談して場合によっては少し喉を広げるような手術してみたり、治すにはいろんな方法があります」

ただ15回を超え、特に20回以上になってくると深刻になって来るそうです。睡眠時無呼吸症候群はいろんな合併症を引き起こすことが知られています。
この中でも科学的証明がなされて、確実に悪化していくのは循環器障害だそうです。

血圧に問題がある人は要注意

睡眠時無呼吸症候群の患者で、中山先生が特に気を付けているのが血圧に問題のある人だとか。

「私たちは昼間は、神経を使って、血管を興奮させて血圧を上げて仕事をし、夜は血圧を下げて休ませるんです。想像してみて頂きたいんですが、無呼吸が20~30秒止まった後に、ガーって息を吹き返した時に、身体がどれだけ痙攣して興奮していくか。その瞬間に血圧が上がるんです」

本来なら、寝ている間に血管を休めるのですが、血圧に問題がある人が睡眠時無呼吸症候群になると、血管を休ませることが出来なくなります。血管に疲労が溜まっていって身体を蝕んでいくことになってしまいます。

日本人の悲しい運命

睡眠時無呼吸症候群は肥満と結び付けられやすいですが、実は「日本人特有の悲しい運命」として、痩せていても睡眠時無呼吸症候群になることもあると山中先生は言います。

日本人は睡眠時間を削っても働く傾向があります。最近、睡眠時間を削ると食欲が上がるという科学的な証明がなされました。

「つまり睡眠時間を削ると翌日余計に食べてしまう。例えば、ボーっとしてると口に何か入れたくなるじゃないですか。あれがその現象なんですね。そうすると太る。太ると無呼吸になる。無呼吸になると睡眠の質が落ちるとボーっとして…と悪循環に入っていく」

本人に自覚がない

「自分ではわかりづらいんですが、隣にパートナーがいて『あなた、ものすごく止まってたわよ』って、病院に連れて行けばいいんじゃないですか?」と丹野みどり。

「私たちも専門医をやっていて、非常に泣けることがあるんです。奥さんが連れて来られるんですが、本人からは『ほっといてくれ』って言われることがよくある。というのは、これだけ苦しい無呼吸があるのに、本人は気づかない。自覚が全くないんです」

いろんな検査して呼吸が止まっているという証明を見せるんですが、そこまでやっても、なかなか治療を受けてくれない方も多いと嘆く山中先生です。

子どももある無呼吸

睡眠時無呼吸症候群は大人だけでなくこどもにも存在します。
ただこどもと大人の病態は全く異なります。口の中のリンパ組織で「扁桃腺」とよく言われる扁桃というものがあります。

「こどもは元々扁桃が大きいのが自然で、3歳から5歳とかに扁桃が一番大きくなります。その後、徐々に萎縮していくのですが、この時期に、呼吸する場所が狭くなるために、同じように睡眠時無呼吸が起きてきます」

こどもがみんな成長過程で睡眠時無呼吸症候群になるわけではなく、扁桃がある程度、大きくなっても、呼吸ができれば大丈夫だそうです。

小顔化が無呼吸の原因

「日本人ってそれほど太ってなくっても、無呼吸が多いことが、最近の医学でわかってきました。これには海外がびっくりしてるんです。その理由のひとつが今のお子さんたちに多い小顔です」

小顔ということは骨格が小さくなります。そこで扁桃が同じ大きさで育ったとしても、顎が小さいと、呼吸する場所は狭くなります。そのために無呼吸が起きることがあるそうです。

「特にお子様に関しては、成長や学習の妨げになるので、1ヶ月以上いびきをかかれる時は、必ず医療に相談していただきたいと思います」という中山明峰先生でした。 

人類が進化すると、どんどん顎が細くなるという説があります。ということは、今後ますます睡眠時無呼吸症候群は増える傾向にあるということですね。
(尾関)

丹野みどりのよりどりっ!
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2018年06月06日16時32分~抜粋

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