丹野みどりのよりどりっ!

長引く風邪、ひょっとしたら結核の疑いあり?

先週名古屋市役所で、結核の集団感染が発覚しました。職員32人が感染し6人が発病しています。

5月29日『丹野みどりのよりどりっ!』では、CBC論説室の後藤克幸特別解説委員が結核について解説しました。
結核と聞くと、偉人の死因などで「不治の病」というイメージを持つ人も多いのですが、今はちゃんと治る病気なんです。

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今も意外と多い結核患者

結核は決して過去の病気ではありません。
結核は毎年どれくらいの人が感染しているんでしょう?

「世界では、毎年800万人の新たな結核患者が発生しています。日本では毎年1万8千人前後の患者が新たに報告されていて、結構多いんですよ」

人口10万人当たりの罹患率の統計を国際比較してみると、日本は先進国の中で随分と高いそうです。アメリカやヨーロッパ諸国では、人口10万人当たりの罹患率が3~4人と一桁。これに対して日本は17人余りで二桁と高く、特に大都市周辺で、毎年患者が発生しているそうです。

結核とはどういう病気?

名前は聞く結核、どんな症状が出るのでしょう?

「空気中に浮遊してる結核菌が体内に入って、呼吸器系に作用するという病気です。咳とか痰、発熱など風邪と非常によく似た症状が長期間続きます。症状が進んでいくと肺の中の細胞を壊していって、呼吸困難になってしまいます」

途上国では、抵抗力が少ない乳幼児の患者が多いのですが、日本では高齢者の患者が多いという特徴があるそうです。

死の病のイメージがありますが、今はどうなんでしょうか?

「テレビドラマや映画で、江戸時代とか明治時代のシーンで、咳をして血が出ると、結核で死を覚悟するという描かれ方がよくあるんですが、今は薬が進歩していて、的確な薬の治療を受ければ必ず回復する病気です」

結核患者はなぜ発生する?

なぜ今もコンスタントに結核患者が多く発生するんでしょうか?

「日本では、予防の決め手になるBCGワクチンをこどものうちに打つことが普及してきたので、乳幼児の結核、そして重症化する事例は、だいぶ減ってきています」

ただしBCGワクチンの効果は10~15年程度と言われています。ですから20歳代後半から30歳代以降になると、BCGの効果が薄れてきて結核にかかる可能性はあるそうです。

「それでも社会全体でみると、それこそ明治時代のように、周りにいろんな人がかかって苦しんでいるという状況ではなくなりつつあって、1970年代までは罹患率が減少していたんです」

ところが1980年代になると減少率が停滞します。これは"社会の油断"が原因だそうです。具体的には結核に関心を持つ人が減ったことに加え、医療の現場ではこんなことも…

「結核患者が周りにいた昭和初期の頃までは、お医者さんが結核の患者を診て診断する機会がいっぱいあったんですけど、今の若いお医者さんの中には結核の患者を見たことがない人も多くなってきてるんです」

1999年には罹患率が上昇した時期がありました。当時の厚生労働大臣が「結核緊急事態」と言って世論に危機感を募るという事態も起きていたほど、結核に対する社会の緩みが出ていたそうです。

長引く風邪は要注意

「結核は今でも、患者さんが出る病気であって、感染の可能性があるということに関心を持つことです。風邪とよく似た症状で、咳、痰、発熱が3週間以上続く時は、結核の可能性も疑って、ちゃんとした呼吸器内科の専門医の受診を受けること」

医学教育では、結核患者を診た医師がちゃんと若い世代を指導をして育てることも必要です。まだまだ結核は過去の病気ではありません。

今は超高齢社会。昔、結核菌が街の中にあった時代に感染している方もいます。若い時はしっかり栄養もとって、結核を押さえ込んでいたのが、高齢になって、抵抗力が落ちてくると、菌が体の中でもう1回、活動を始めるという事例があるそうです。

「今、高齢者の結核が増えていますので、お年寄りは特に、身体の抵抗力が落ちてきた時期にはちゃんと注意をして検診を受けてくださいね」と注意を促す後藤克幸特別解説委員でした。

沖田総司や高杉晋作を死に至らしめた結核ですが、今ではちゃんと治る病気なんです。風邪が長いと思ったら、専門医を受診してみてください。
(尾関) 
丹野みどりのよりどりっ!
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2018年05月29日16時17分~抜粋

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