手をかけるところ、サボるところ
「……え、先生、なんか、こだわりがいっぱい感じられますよ」
しばらくの沈黙の後、口を開く丹野みどり。
手の込んだ料理名。しかも、カタカナいっぱいの洋風料理。
ここに和の調味料、淡口醤油を入れる!?
「でも、
ずっとね、スープやったでしょ。そのときにね、淡口醤油って洋風料理にも合うんじゃない?ってわかって」
「だって、
ポタージュにも使ったもん」
関先生の手にかかれば、奇天烈な組み合わせも予定調和になってしまう。
さっそく調理開始です。
用意するお肉は手羽元。
「お祝い席とか、そういうときに骨の付いたお肉っていいじゃないですか」
「華やかになりますよね」
今日は8本用意します。
そこにちょっとだけ下味を付けますが、忘れてしまっても大丈夫。
ただし、お肉に切り込みを入れることだけは忘れないでください。
そうしないと、味が染み込みません。
お肉にそのような準備を施したら、今度は油の準備です。
オリーブオイルに潰したニンニクを入れて、ニンニク風味のオリーブオイルを作ります。
さっそく手が込んでいる!と思っていると、
「それもね、『先生、ニンニクちょっと大変だわ』とおっしゃれば、もうオリーブオイルオンリーでも大丈夫です。その辺ちょっと手抜きしても大丈夫かなーという感じで、こう作っていきましょう、という感じですね」
なんとも心強い言葉をくださる関先生でした。
洋風料理に、和の調味料
肉と油の下準備が整ったら、お肉を焼いていきます。
全面にキツネ色が付いたら、お鍋に放り込んじゃいましょう。
そこに入るのが、白ワインビネガー。
蓋をしないで、3分くらいクツクツクツクツして、ビネガーの酸味を飛ばします。
この工程がお肉のワン段階。
お肉に味を付けるだけではありません。
ビネガーは、酢ですから、お肉から身を外れやすくしますし、肉自体も柔らかくしてくれます。
そしたら今度はそこに、ワインをバサッと入れましょう。
今日はたっぷり1カップ使います。
湯剥きしたトマトのザク切りを入れたら、そこになんと淡口醤油を加えます。
酢と淡口醤油は相性抜群。その意味でここに淡口醤油を使います。
お砂糖をちょっと隠し味で入れたら、蓋をずらしながらクツクツクツクツと10~15分くらい煮込みます。
そしたらお肉はもう完成。
ちょっと素敵なお皿に取り出して盛り付けます。
残った煮汁は、そのまま煮詰めていき、ある程度煮詰まったら、生クリームが入ります。
「途端に洋風ですね」
驚く丹野みどりを尻目に、洋風になった煮汁に最後、ちょっと追い醤油的なところで淡口醤油を大さじ半分くらい加えます。
「ほわっと良い雰囲気になるんですよ」
関先生のお墨付きをいただいたソースをお肉にかけたら、はいっと食卓に出します。
パスタにもバゲットにも
トマトクリームソースになっているので、お上品な色合いです。
ずっしりとした骨付き肉をほおばる丹野みどり。
「おいしー!おいしい、これなに!初めての味、先生」
チキンのトマト煮込みをよく作るという丹野みどり。
鶏のもも肉に、トマトの水煮缶などを使って、最後に牛乳などを入れて、クリーム状にして煮ていますが、
「今回決定的に違うのは、まず、そのお酢が入っている、酸味ですね」
酢の効果で、肉の身離れがよく、柔らかくなっています。
そこに入ったワインとトマトの味を、淡口醤油がうまくまとめています。
トマトソースのときは必ず隠し味でお砂糖を入れる関先生。
「今回は、フレッシュのトマトを使っています。ぜひともフレッシュの方がおいしいと思います」
水煮缶を使っている丹野みどりに優しくアドバイス。
そんな丹野みどりは、トマトソースを味わって、
「あの、トマトが勝っているかと思いきや、最後の生クリームも入っているので、とってもクリーミー。だけど酢が残っているので、なまったるい、くどいだけではなく、酸味のあるさっぱりとしたクリームですね」
すっかり気に入ったご様子。
「ここにちょっとパスタを添えても良いくらい」
「パスタに和えたらおいしそう!バゲットにベーッと掬いたいですね」
関先生の提案にプラスαで乗っかる丹野みどり。
さらに、パスタに和えるなら、骨付きチキンではなく、鶏もも肉でこの白ワイビネガー煮を作ってみては?と提案します。
洋風料理に淡口醤油。
一見合わない組み合わせに見えますが、いつもと一味違う料理が出来上がります。
ぜひぜひお試しあれ。