丹野みどりのよりどりっ!

銀行の社長を「頭取」と呼ぶ理由

番組宛てにこんな質問が届きました。

「なぜ銀行の社長のことを頭取"と言うのでしょうか」

筆者の知る限りでは確かに銀行だけが、社長のことを「頭取」と呼んでいますね。なぜでしょうか?

そこで2/6の「これってキニナル」では、明治大学国際日本学部の田中先生にお話を伺いました。聞き手は丹野みどりです。
田中先生は普段、日本語の歴史を専門にされている方で、古典から現代までの文献をたどって、日本語がどのように移り変わってきたかを研究していらっしゃいます。
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「頭取」の意味


まず、そもそも「頭取」とはどのような意味なのでしょうか?

「"頭取"とは、『頭を取る人』という意味です。古い文献では、雅楽や能楽で最初に奏でる人、中心で奏でる人をいう例が多く見られます。また"音頭取り"という言い方も早くから見られるので、"音頭取り"の略だとする説もあります。音楽の場面以外でも、早くから使われており、何かを行う集団で、頭を取る人、中心になる人という意味で使われました」

なぜ銀行の社長は頭取?


それでは、なぜ銀行では社長のことを"頭取"と言ったりするのでしょうか?

「明治時代の前半までは、"頭取"と言うことは、銀行以外のいろいろな会社でありました。また、そもそも会社でない集団のトップを"頭取"というのは普通でした」

むしろ明治時代の前半までは集団のトップは"頭取"と呼ばれていたのが普通だったわけですね。
田中先生によれば、銀行以外が新しい言い方である"社長"に変わったのは明治時代の後半だそうです。

「社長」は新しい言葉


ではなぜ、銀行業界だけが"頭取"という言い方を守ったんでしょうか?

「お金は経済の中心、世の中の中心ということもありますし、そもそも会社のおおもとが銀行ですよね。それだけ、伝統を重んじる業界、他の業界とは違うという意識の強い業界だったことから、"頭取"という言い方を守ってきたのではないかと思われます。逆に"社長"という言葉は、幕末・明治期になってできた新しい言葉だったんですね」

bank=「銀行」の理由


銀行にまつわる言葉の由来について、丹野にはこんな疑問もあるようでした。

「あと銀行というところで言いますと、これもそもそも論なんですけどね、英語では“bank”と言いますが、それがなぜ『銀行』と訳されたのでしょうか?」

「まず、銀行の"行(こう)"というのは"お店"の意味になります。つまり、"銀行"とは『銀を扱うお店』という意味です」(田中先生)

なるほど、確かにお金のおおもとは金や銀ですね。

「ただ、最初から"bank"が『銀行』と訳されたわけではなくて、西洋から銀行的なものが入ってきた時に、bankは『両替屋』『両替問屋』という言葉でよく訳されていました。明治期になると、紙幣や硬貨を銀に交換して貨幣の価値を保証する制度ができ、"bank"の訳語として『銀を扱うお店』、すなわち"銀行"という言葉が使われ始めました」

日本語の歴史を辿っていくと面白いですね。

「通帳」の由来


あと銀行と言えば「通帳」もありますよね。これはどういう意味なのでしょうか?

田中先生によると、"通(かよ)い帳"を音読みしてできたのが"通帳"とのこと。「かよい」とは「行き来」の意味で、品物や代金の行き来を記録しておく帳面ということで、"通い帳"と言ったそうです。やがて、音読みして"通帳(つうちょう)"と言われるようになったということです。

他にも身の回りの日本語について調べてみると、意外な由来が発見できるのかも知れませんね。
(ふで)
丹野みどりのよりどりっ!
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2018年02月06日16時38分~抜粋

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