いよいよ忘年会シーズン。お酒を飲む機会も多くなります。
12月13日『丹野みどりのよりどりっ!』、「大人のクリニック」ではお酒と肝臓について藤田保健衛生大学、肝胆膵内科、准教授の川部直人先生に伺いました。
聞き手は丹野みどりです。
少量なら飲んだ方が良い
まず「酒は百薬の長」と言われますが、これは本当なんでしょうか?
「少量ならリラックス効果とかストレス解消、コミュニケーションの仲立ちになったりと様々なメリットがあります」
適量飲んでる人の方が全く飲まない人よりも長生き、という研究報告もあるそうです。
「有名なのは、1981年にイギリスのマーモット博士という方が発表したJカーブという調査結果です。
全く飲まない人よりも、少量飲んでいる人の方が、特定の病気のリスクはむしろ低い。飲酒量が一定以上増えてしまうと、今度は飲まない人よりもリスクが高くなっていきます。これをグラフで表すとアルファベットのJに似ていることからJカーブといいます」
怖い病気には適量のお酒
飲酒すると、例えばどんな病気になりにくいんでしょうか?
「主に心筋梗塞、狭心症とかの心臓の血管に起因する病気です。また、脳梗塞あるいは糖尿病などがこのパターンを示すということがわかっています」
心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病…どれも怖い病気ですが、全く飲まないより、少量飲んだ方がリスクが低いというのなら、安心して飲めます…というわけにもいきません。
「少量であれば」というところが肝。「少量」とはどれくらいの量なんでしょうか?
「研究によるとエタノール換算にして20グラム程度ということになります」
日本酒なら一合ぐらい、ビールなら500ccのロング缶ぐらい、ワインならグラス2杯弱だそうです。
丹野みどりは「グラスワイン2杯弱か。なるほど~。だいたい2杯目以降が楽しくなってきますけれども。あ~」と切なげです。
お酒にも栄養はある
お酒にもいろいろ種類がありますが、身体に良い成分が含まれているものはありますか?
「ワインは様々なポリフェノールが含まれていて、抗酸化力が高いと言われています。また、日本酒にはアミノ酸とかビタミンが豊富です」
お酒には栄養分があるとはいえ、人によって強い弱いがあります。
また、性別や年齢、健康状態によっても、それぞれ適量が違うそうです。
疲れていると、酔いやすいということもあります。
酒の体内旅行
飲んだお酒は、身体の中でどうなるんでしょうか?
「身体に入ったアルコールは、胃や小腸から吸収されます。
胃腸の血管から門脈という肝臓に送り込まれる太い血管があるんですけども、それを通過して全身の臓器に流れていくわけです。そのほとんどが、まず肝臓を通過する間に処理されます」
最初に肝臓を通過する際に、アルコールは酸化されてアセトアルデヒドという物質になります。このアセトアルデヒドが肝臓で同じように酸化されて「酢酸」に変化するそうです。
「酢酸が血液に乗って肝臓から離れていって、今度は主に筋肉で酸化されます。最終的に水と二酸化炭素に分解されます。そして二酸化炭素は呼吸で身体から排出されて、水は主に排尿によって身体から排出されます」
深酒した人は、吐く息がお酒臭いですが、アルコールの2%から10%が呼吸から直接出るんだそうです。
肝臓の仕事
飲んだお酒は直接肝臓に行くので、肝臓には結構負荷がかかるんですね。肝臓は、アルコールを処理するだけじゃなくて、どういう機能を持ってるんでしょうか?
「肝臓は全身の工場と言われるほどの働きをしています。腸から吸収された栄養分を取り込んで、身体に必要な成分に変えたり、貯蔵したり、という代謝の働きをする重要な臓器です。不要な物質を解毒して胆汁の中に排泄をする働きもあります」
飲み過ぎると肝臓にダメージ
もちろん、肝臓はアルコール専門の器官ではありません。
アルコールを大量に飲み続けると、肝臓でどういうことが起きるんでしょうか?
「肝臓の中で中性脂肪という脂分の剛性が高まってしまいます。その結果、肝臓に中性脂肪が蓄積した状態の脂肪肝という状態になります。
さらに多量の飲酒を長期間続けていくと、肝臓の細胞が壊れてしまいます。その少なくなった肝臓の細胞の隙間に繊維が作られて肝臓が固くなり肝硬変という状態になったり、肝臓の細胞が急激に破壊されるとアルコール性の肝炎という状態になる場合もあります」
いわゆる"フォアグラ状態"となるわけです。
アルコールが身体に良いとは言え、やはり飲みすぎはいけません。
これからの季節、お酒はほどほどに。
(尾関)
丹野みどりのよりどりっ!
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2017年12月13日16時37分~抜粋