「狐の嫁入り」について、こんなおたよりが番組宛てに届きました。
「こどもの頃から不思議に思っていることがあります。それは、太陽が見える晴れた空から小雨が降った時、『あっ!狐の嫁入りや!』とよく言っていました。今でもよく言いますが、なぜ晴れた日に雨が降ると『狐の嫁入り』と言うのでしょうか」
そこで12/12の「これってキニナル」では、「晴れた日に雨が降ることをなぜ『狐の嫁入り』と言うのか?」を取り上げました。
今回の回答者は、気象予報士の澤朋宏アナウンサーです。
晴れた日の雨=「狐の嫁入り」の理由
晴れた日の雨=「狐の嫁入り」の理由
「早速ですが、なぜ晴れた日に雨が降ることを『狐の嫁入り』というのですか?」
丹野みどりがストレートに尋ねます。
「晴れた日に雨が降ることは、気象的には"天気雨"などと呼ばれています。なぜ晴れた日に雨が降ることを『狐の嫁入り』というのか、タヌキじゃないのか?いろいろ考えていくと深くなってしまうんですが、由来は、昭和初期までの嫁入り行列に遡ります。
昔、結婚式場が世になかった頃というのは、家から家へのお嫁入り、夕方どきに松明に火を灯して隊列を組む"嫁入り行列"が行われていました」
人気のない山の中に、ポッポッと火が見えたりする、不思議な現象が起こったそうです。
「あれはもしかしたら、狐が人を化かそうとしているのかもしれない。狐が嫁入りの行列を始めたのかもしれない…
この人を化かすような現象を、晴れた日に雨が降る現象と重ね合わせて、狐の嫁入りと呼ぶようになったとか…」
しかし、これは一説に過ぎないのだとか。
「もう諸説も諸説、いろいろありまして」
「いろいろあるんですね」と丹野も苦笑い。澤アナが話を続けます。
「その狐の嫁入り行列を人間に見つからないようにするために、晴れているのに一時的に雨を降らすことで、狐が人を化かそうとしている、とか」
天気雨を「狐の嫁入り」と呼ぶ理由は諸説あるようですね。難しいです。
海外の「狐の嫁入り」
「これ、海外ではどういう言い方をしているんでしょうか?」と丹野。
「晴れている中で雨が降るという現象は、実は世界中でもいろんな動物になぞらえた呼び名があるんです」
「ええ!どうして?」と丹野は興味深々。日本だけの呼び方ではないみたいですよ。
「フランスでは"オオカミの結婚"(wolf's wedding)。イギリスにいくと"サルの誕生日"(monkey's birthday)。ブルガリアは"クマが結婚した"(bear getting married)、フィンランドに行きますと"キツネの入浴"(foxes are taking bath)」
「風呂に行っちゃうんですね」と、ニヤニヤしながら丹野がツッコミます。
「アメリカに行きますとちょっと怖いのが出てきて、"devil is beating his wife"、つまり『悪魔が嫁さんパチーン!』みたいです。タンザニアに行きますと"ライオンがこどもを生んだ"(lioness is giving birth)。それ以外のアフリカの国では、Jackal marries wolf's wife、つまり『ジャッカルが別の動物であるオオカミと結婚した』となります。『そんなことあるわけないだろ!』っていう話だったり、ジャッカルやオオカミやクマなど、人間がちょっと恐れを抱いてる動物だったりになぞらえてこの現象は言い表されているようです」
「そこは世界で共通しているわけですね」と丹野。不思議なものですね。
晴れた日に雨が降る理由
「そもそも気象学的に、晴れた日に雨が降るのはなぜでしょうか?」と丹野。
「その謎を解くカギは、『雨粒って、雲から落ち始めてから地面に届くまで、どれくらいの時間で地上まで届くか?』ということです」と澤アナ。
「おっとぉ」と意表を突かれたように言葉を漏らす丹野。
「考えたことなかったですよね。私も気象予報士の資格を取って12年。このお題を頂いて初めて考えました」と澤アナ。
「そうなんですか!?」と驚く丹野に対して「忘れてた!」と声高らかに放送で喋る澤アナ。話を続けます。
「雨が降り始める時の高さは、おおむね2,500~3,000メートル。大きさによって違うんですけれども、よくある雨粒は半径1mmくらいと言われます。これの落下速度は、時速20kmくらいなので、雲から地面に届くまで10分ほどかかるんです。その間に、上空で雲が風に流されたら…」
「あ!そういうことか!」丹野がひらめいたみたいです。
「そういうことです!雲が移動してしまい、日が射しているのに雨が降る、という現象が生まれます」
「『この雨粒は10分前に来たのね』と語りかけてもいいわけですね」とロマンチックになる丹野に「『星のまばたきは…』みたいなね、そんなんでええんかな?」とツッコむ澤アナ。
いわゆる「天気雨」はあまり起きる現象ではありません。
「今日は一日中全国で雨です」なんていう日ではなく、予報でいうと「晴れ、ところにより一時雨」なんていう、雨雲レーダーでポツリポツリとだけ雨雲の反応があるような、上昇気流で局地的に雨雲が短時間だけ発生するような日に起きやすいそうですよ。
また、季節的には夏から秋に起きやすい現象ですが、1年を通して起こり得るそうです。
丹野と澤アナ、同期コンビが絶妙に絡み合う12/12のキニナルでした。
(ふで)
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