丹野みどりのよりどりっ!

意外とカンタン!渋柿から渋味を抜く方法

日常にある素朴な疑問・気になって仕方がない「アレってなんで?」といったリスナーから送られた『キニナル』を、番組チームが調査し、さらに詳しい方々に教えていただくコーナー「これってキニナル」。

番組宛てにこんなおたよりが届きました。

「先日、渋柿を頂きました。干し柿にするのが面倒なので、天ぷらにして食べたら渋いどころか、甘かったです。熱のせいでしょうか?油のせいでしょうか?なぜ、渋柿の『渋味』が抜けるのか、コレって気になります!」

そこで11/28の「これってキニナル」は、「なぜ渋柿の『渋味』はなくなるのか?」について取り上げました。
お話を伺ったのは奈良県農業研究開発センターの浜崎さん。聞き手は丹野みどりです。

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そもそも渋味とは?


奈良県農業研究開発センターは明治28年、1895年の奈良県農事試験場からスタートして現在に至る、農業関連の地方公設試験場の一つで、奈良県内における農業に関する研究を行うところです。
今回のお答えいただく浜崎さんはそのうちの農産加工を専門とするもので、柿を始め様々な作物を材料に、加工技術の開発や健康機能性の研究などを行っています。

まず、そもそも「渋味とは何か」から浜崎さんに教えていただきました。

「いわゆる『味』というものは、舌の味蕾細胞で反応して甘味や酸味を感じます。渋味は水に溶けた『タンニン』という物質が、舌や口の中の粘膜とくっついた時に感じる感覚で、厳密には『味』とは違うんですね」

なるほど。渋味は厳密には「味」と違うんですね。では「タンニン」とはどのような物質なのでしょうか?丹野が伺いました。

「タンニンとは化学物質の総称で、ポリフェノールというさらに大きな括りの物質の一つになります。ポリフェノールには、お茶のカテキン、ソバのルチン、大豆のイソフラボン、ブルーベリーのアントシアニンなど様々なものがありますが、タンニンもその仲間です」

ポリフェノールはよく耳にしますが、タンニンもそのひとつだったんですね。

「よく赤ワインもタンニンの渋味の評価で表現されますもんね」と丹野。
言われてみれば、身近なところにタンニンは含まれているのかもしれませんね。浜崎さんによれば、タンニンの基本的な性質として、やはり渋味があることが挙げられるそうです。

柿とタンニンの関係


渋味の秘密は分かりましたが、では柿とタンニンにはどのような関係があるのでしょうか?
「柿にはタンニンが含まれているのか?」丹野が伺いました。

「そのとおりです。タンニン自体は、大抵の植物が何らかの形で持っている成分で柿にも含まれています。ただ柿の場合は、タンニン細胞という非常に特殊な組織を持っていて、そこに渋味の成分である柿のタンニン『柿タンニン』を高濃度に貯めることができるのです」

「柿は特に貯めこみ易い細胞を持っているわけですね」と丹野。
だから渋柿は特別に渋いわけですね。ただ、どの柿にも「柿タンニン」は含まれているのでしょうか?丹野は疑問を抱きます。

「まさに今朝食べた柿は、ねっとりしていて甘ーい種なし柿だったんですが、全く渋くなかったのはなぜだったんですかね?」

この問いに対して浜崎さんはこう答えられました。

「種無し柿を渋抜きされたものか、甘柿でたまたま種が入ってなかったかです。甘柿の場合はそもそもタンニン細胞が小さいので、貯められるタンニンも小さいんですよ。果実が育っていくうちに、口の中で感じられないくらいに、タンニンが薄くなっちゃうんですね」

「柿によっていろいろあるというわけですね」と丹野は納得した様子でした。

浜崎さんによれば、渋柿を食べた時に渋味を感じるのは、やはり柿タンニンのせい。渋柿をかじるとタンニン細胞が壊れ、その中の柿タンニン液が流れ出してきます。
柿タンニンは、通常は水に溶ける状態なので、口の中の粘膜と反応して、「渋い」と感知するということです。

渋味を抜く方法


「よく干し柿にすると渋味が抜けると言われていますが、これはなぜですか?」丹野が伺いました。

「干し柿にする時に皮を剥きますよね。皮を剥くと果実の中で無酸素呼吸が始まります。無酸素呼吸が始まるとアルコールが柿の中にできてきて、アセトアルデヒドに変わるんですよ」と浜崎さん。

アセトアルデヒド、なんか聞いたことありますね。丹野も聞き覚えがあるようです。

「私たちも、お酒飲むとアセトアルデヒドできますよね」

「そうですね。ヒトで言うとお酒で悪酔いした時に気分を悪くしますよね。柿の場合もアセトアルデヒドに変わる現象が起こるんですよ。それが柿タンニンとくっついて固まっちゃう性質があるんです。それで固まっちゃうともう溶けないので、渋味を感じなくなるんですね」

なるほど。では皮を剥く以外に渋味を抜く方法はあるのでしょうか?丹野が伺いました。

「柿タンニンは他の物質と非常に『くっつきやすい』という性質を持っていますので、例えばたんぱく質とくっつく性質を利用して、潰して牛乳と混ぜたり、刻んでマヨネーズで和えたりして渋味を感じなくて食べられます」

「へえー勉強になります!!渋味を抜く方法はいろいろあるということですね」

でも、今回リスナーさんからのおたよりはちょっと違いました。

「今回、リスナーさんから頂いたご質問で『天ぷらにしたら甘くなった』ということでしたが、これはどうしてですか?」と丹野。

「天ぷらにすると油が多くなり、渋味がマスキングされる関係にあって、感じにくくなる性質があるんですよ。渋味がそのものが完全に『消えた』というわけではないんですけれども、人間が感じなければ、渋抜きできたのと同じ状態ですよね」と浜崎さん。

「じゃあさっきのたんぱく質とくっついて渋味が固まったとか、そういうことではないんですね?」

「そういうわけではないと思います」

でも渋味を感じなければ、天ぷらにする方法もアリですね。

 渋柿の見分け方


最後にこんな質問にもお答えいただきました。

「私が今朝食べた甘い柿と、渋柿との見分け方なんかあるんでしょうか?」

「基本的に店で売られているものは、干し柿用など、特別な用途でない限り、渋柿でも渋を抜いて販売されていますので、渋い柿に当たることはまずありません。庭木の柿など甘いか渋いかよく判らない場合、果実の皮をめくって黒い点々がぽつぽつと見えれば、それがタンニンが固まったものなんですけれども、その果実は甘いと見て大丈夫です。点々が見えなければ渋い可能性があるので気をつけて食べてください」と浜崎さん。非常にわかりやすく説明していただきました。

みなさんも柿を食べる時は渋柿かどうか確認してみてください。そしてもし渋柿なら、いろいろと渋味を抜く方法はあるので、是非試してみてください。
(ふで)
丹野みどりのよりどりっ!
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2017年11月28日16時34分~抜粋

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