丹野みどりのよりどりっ!

臓器移植法施行から20年。日本の臓器移植は進んだのか?

『丹野みどりの よりどりっ!』、10月19日の「NEWSよりどりっ!」のテーマは「臓器移植法が施行されてから20年」です。
脳死した人からの臓器移植を認めた「臓器移植法」が施行されたのが20年前の1997年10月16日でした。

この20年で日本の移植医療はどう変わったのか。諸外国との現状とも比較しながら、臓器移植法の課題をCBC論説室の後藤克幸解説委員が、やさしく説明します。聞き手は丹野みどりです。

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臓器移植法とは?


―臓器移植法とはどんな法律でしょうか?

1997年10月、法律として施行されました。
それまで心停止が人の死でした。それ以外にも、脳が死んだ状態も人の死と認めて、本人が生前にドナーカードなど書面に臓器提供の意思を示していた場合には、脳死と判定されたら、その段階で臓器提供を認めましょう、ということを記した法律です。

2010年に一度改正も行われています。
本人の生前の書面による意思が表明されてない場合でも、家族の方から「ぜひほかの人のために役立てて欲しい」という希望が出た場合は、臓器提供することが可能となりました。

臓器提供は420件と増加


―この法律の施行後、脳死した人からの実際の提供件数は?

これまで20年間でおよそ420件です。

法律が改正されて、家族の意志でも臓器提供できるようになってから、件数が増えています。
それまでは年間5~10例と非常に少なかったですが、改正後は、30~40件、最近では50件~60件くらいになりました。

海外と比べると桁違いに少ない


―海外と比較するとどうでしょうか?

欧米では、臓器移植は医療の進歩であるという受け止め方で、日常の医療としてどんどん広がってきています。

人口100万人あたりで臓器提供する人の数をみると、アメリカは年間26人くらい、イギリスは17人、オーストラリアは16人、ドイツ13人。
日本は0.9人と格段に少ないです。

臓器移植するの三つの場合


―現在日本で臓器移植できる状況を再確認します。
・本人の意思表示カードがある場合
・本人の意思表示カードがなくても、ご家族がぜひお願いしますといえばそれもOK。
・本人もご家族も意志としてはなかったが、医療従事者が最善を尽くしても脳死の状況ですと説明があったもとで、提案があって、ご家族が話を聞いてみますとなって初めてコーディネーターと話すという場合。

この三つの場合があります。

医療現場で、医療従事者と患者・ご家族とのコミュニケーションが、どこまで心に寄り添うことができるか。単に臓器移植の問題にとどまらない、現在の医療のあり方、コミュニケーションのあり方が問われています。

欧米のように「移植は医療の進歩である」という受け止め方が、日本では広まってない現状があります。移植は遠い存在でまだ関心が薄いです。

免許証・健康保険証の裏に意志表示


―免許証・健康保険証の裏に臓器提供の意思表示をする欄があります。私(丹野)は、正直書いてはいませんし、家族で話し合いをしたことはないです。

日本移植ネットワークが「臓器移植について、家族と話したことがありますか」とアンケートを取りました。「ある」が26%、「ない」が74%と、「ない」が圧倒的多数でした。

まだ日本では、移植医療について、自分たちの医療に関わる問題として家族の話題に上ることは、非常に少ないです。

移植コーディネーターの育成


医療現場で最善の医療を尽くすのが大前提。その先、移植を待っている患者さんもいるという中で、能力の高いスタッフの方が、ご家族の心に寄り添って、最後の選択のひとつとして臓器提供という医療もあることをどのように説明するのか。

患者や家族に寄り添う専門職として"移植コーディネーター"という職業がありますが、日本では圧倒的に不足しています。
これからどのように養成していくのか。医療現場での対応、スタッフの教育、まだまだ課題が残っていると思います。

まずは意思表示から


リアクションメールがいくつか寄せられました。

「私も未記入のままです。たとえ遺体であってもきれいな状態で焼かれたい願望があるんですよね。でも、どうせ焼かれて灰になるのなら、困っている誰かの身体の中で役に立ってくれるのならと、最近は提供しようかなと思う方が強くなってきました」(Aさん)

「臓器移植を望む人の気持ちは理解できます。でも、臓器移植はドナーの突然の不幸の上に成り立つもので、その家族から見れば、寝ている身内にメスを入れるわけで、なかなか受け入れるには覚悟がいりますよね。理屈ではわかるんですが、考えてしまいます」(Bさん)

丹野は「意思表示が進んでいないことが問題かなと思います。多くの人がNOと言うのであれば仕方ないことです。現状、移植が進まない大きな理由は、意思表示が進んでないことにあるようです。ここから始める必要があるのでは」と、まとめました。

筆者も早速、免許証の裏に今の考えを記入しました。
(みず)
丹野みどりのよりどりっ!
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2017年10月19日16時19分~抜粋

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