金曜日の「大人のたしなみ講座」では、知っておきたい、知っているとためになる大人のたしなみを専門家の方に伺います。
今回も引き続きウイスキーの嗜み。
ウイスキー文化研究所認定講師でウイスキープロフェッショナルの山本久理子先生に、丹野みどりが伺いました。
知っておきたいウイスキーの飲み方・合わせ方
ウイスキーには水を交互に
アルコール度数が高いウイスキー。市販化されているものだと40度以上あります。
ワインで14~15度ですから、ウイスキーをそのまま飲むと、舌や喉の奥が麻痺してしまいます。
「ウイスキーを飲む時には、必ずミネラルウォーターなどお水を飲んで頂きたいところです」と山本先生。
この水は「チェイサー」と呼ばれるもの。バーで「チェイサーをください」とオーダーすると、たいてい水が出てきますが、これはアルコールによって麻痺した味覚をリセットするための飲み物です。
人によっては炭酸水、あるいはビールをチェイサーにする場合もあります。
ストレートで香りを楽しむ
次に飲み方ですが、まずは「ストレート」から。
「ストレートは『ニート』とも言いますけれども、文字通りウイスキーをそのまま飲む方法です」。
ニート(neat)とは「混じりっ気のない」という意味です。
ストレートが合うウイスキーは、基本的には芳醇な香りのウイスキーや、個性を楽しむモルトウイスキー。
バーでは、ショットグラスや、香りを楽しむために口が大きめのグラスで出されます。
「でもアルコール度数が高いので、水と交互にちびちび飲みながら、ウイスキー本来の風味を楽しんで下さい」
日本独自のスタイル・水割り
長い時間、より多くのウイスキーを楽しみたい方には「水割り」がおススメ。
「モルトとグレーを合わせて作る軽い仕上がりのブレンデッド・ウイスキー。熟成年数(樽に入ってる期間)が短かいウイスキーは、水割りが合ってると思います」
実はこの「水割り」、日本独自のスタイルなんです。
日本食に合わせて、アルコール度数を調節する目的で考え出されました。
「ちょっと飲みにくいウイスキー、癖のあるウイスキーを、自分好みの濃度に割ることができるっていう良さがありますよね」
変化を楽しむオン・ザ・ロック
本当はストレートを飲みたくても、喉にあの独特の「カーッ」と来る刺激は避けたい。ストレートは強すぎるけど、割って飲むと物足りない。あるいは冷たい口当たりがお好きな方、そんな方には「オン・ザ・ロック」がおススメ。
「氷が徐々に溶けていくので、味わいの変化を楽しんでいただけると思います」
映画『殺人遊戯』の松田優作もオン・ザ・ロックでした。
ハイボール、カクテルなどの飲み方
最近流行りの「ハイボール」は、基本的には炭酸ソーダで割ります。
「さらに氷を入れて、時にはレモンやライムを入れても、爽やかな味わいになると思います」
ビールを飲むような感覚で飲めるので、料理との相性も比較的良好だそうです。
「気軽に飲めて、お値打ちなウイスキーにソーダなどが味をカバーしてくれて、美味しくいただける飲み方かと思います」
この「たしなみシリーズ」では、以前カクテルを取り上げたこともありますが、ウイスキーベースのカクテルも多いですよね。
「例えば、バーに行かれた際にお好きなウイスキーがあったとして、甘い味わいが良いとか、辛い味わいが良いとか、好みを知識豊富なバーテンダーさんにお伝えして、カクテルをお願いするのも良いと思います」
『リバー・ランズ・スルー・イット』という映画で、ビールジョッキの中に、ウイスキーを入れたショットグラスを沈めて飲むボイラー・メイカーなるカクテルが出てきました。
ワイルド派の方におすすめです。
ウイスキーを飲むタイミングは?
食事に合う水割りやハイボールは別ですが、基本的には食後に飲むものだそうです。
木からの香りが、ウイスキーの味の5割から7割を構成すると言われてます。ですからウイスキーは、香りを楽しむ飲み物なんです。
「ストレートで超熟タイプやモルトウイスキーを、寝る前のナイトキャップ的に飲んで頂いて、香りに包まれてお休みになるのも良いと思います」
ラベルの表示の年数は?
ウイスキーは、完成してすぐに出荷できるものではありません。10年20年と熟成させて市場に出回るものです。
「作り手の気持ちや考え方、または『私、10年前何してたんだろう?』とか、思いを馳せながら、ウイスキーを飲まれると楽しくなるんじゃないかなと思います」
ウイスキーのラベル表示に「10年」と書いてあっても、それはその樽の最低年数を示します。
ほとんどのウイスキーが、いくつもの樽を合わせて商品化してるんです。
つまり、その10年という数字は、ひょっとしたら12年とか15年の樽が使われてるかもしれないんですけど、最低熟成年数を表示しなければいけない決まりのために書かれているのだそうです。
メニューで「25年」という表示を見たことがあるという丹野。その中には、それ以上の時間熟成したものが入ってるんでしょうね。
人生や時の流れを感じられるお酒
「今のお話を伺うと、確かにそうですね。25年前の自分は、ああだったな、こうだったなと思いながら飲むと、人生を考えますね」と、しみじみ語る丹野みどり。
実はこのコーナーの直前、番組で再婚を発表したばかりなのです。
「幸せな思い出から、寂しくなるような想いもあると思うんですけども」と、山本先生。
ウイスキーは、飲みながら、人生や時の流れを感じることができるお酒です。
「ウイスキーは、仲のいいお友達と静かに語らうお供として、飲んでいただけると、良いのかなって思いますよね」
ウイスキーは、まさに大人のたしなみ。たまには、ハンフリー・ボガードのように飲んでみますか。
(尾関)
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