丹野みどりのよりどりっ!

どうして紙のサイズはAとBの2種類あるの?

日常にある素朴な疑問・気になって仕方がない「アレってなんで?」といったリスナーから送られた『キニナル』を、番組チームが調査し、さらに詳しい方々に教えていただくコーナー「これってキニナル」。

7/11に取り上げたおたよりは、は「A4とB5のコピー用紙を間違えて買ってしまった」という方から。
なぜ紙にはAとBの2種類のサイズがあるのでしょうか?
このキニナルについて、紙の博物館学芸員の山口さんに解決していただきました。

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昔の日本は不便そう


今回のテーマは「どうして紙のサイズは、AとBの2種類あるの?」。

紙のサイズでよく目にするA判・B判というのは、JIS規格で決められている紙のサイズです。
昭和3年、JIS規格の前身となるJES規格が作られたのですが、そこで日本で初めて紙のサイズが規定されました。

それまで、地域やメーカーによっていろいろなサイズがあったので、少しずつ大きさの違う製品がある状態で、販売や流通に不便だったのです。

例えば帳簿用紙といっても、お店で見ても少しずつ大きさが違うので、お店に並べるのも面倒だし、会社で使うのにもサイズが統一されていないから保管しにくい、といったことが起こっていました。
「なるほど。確かに昔の日本は不便そう」と納得する丹野みどり。

規格を決めるにあたっては、当時、国内で流通している紙のサイズを事前に調べた結果、大きく分けて2系統あったので、それを活かして、A判・B判にまとめることになったのです。

A判は国際規格


アルファベットで紙のサイズを呼ぶなら、世界で通用するサイズなのでしょうか?

実は、世界で共通するサイズはA判だけなのです。
紙のサイズの規格を決めるにあたって、欧米の紙のサイズを調査したところ、ドイツの工業規格の考え方が日本に合うことがわかりました。

日本にもともとあった「菊判」というサイズが、ミリ単位では異なるのですが、A判と非常に近いサイズだったそうです。
ドイツの工業規格を取り入れたA判は、国際的に通用する標準のサイズになっています。
日本で作った書類のサイズがそのまま海外でも通用するので、近頃は、日本でもA判が多く使われるようになってきていますよね。

B判は日本のオリジナル規格


一方のB判は、日本独自のサイズです。
日本の「美濃判」と言われる古くからの紙のサイズが由来です。
江戸時代に、徳川御三家だけが使えた特別の紙のサイズが、この「美濃判」でした。

岐阜県の美濃は、和紙の産地として非常に有名ですが、この地で特別に漉かれた専用の紙のサイズという意味です。

明治時代以降になると、一般の人々にも広く使われるようになりました。ドイツから取り入れたサイズが「A判」と呼ばれることから、Aの次のサイズということで「B判」と呼ばれるようになったと想像されています。

B判は、日本人にとって非常に馴染み深いサイズで、今でも漫画雑誌やノート類はB5サイズが多いですよね。
ノートはA4だと大きすぎるしA5だと小さすぎる。やっぱりノートはB5がちょうどいいという感覚は、実は、日本人ならではということなのです。

AとBと両方のサイズがあることは煩雑ですが、歴史をたどってみると、どちらも大切ないわれがあって、現在も使い続けられているサイズなのですね。

紙に文字が書ける理由


この際ですから、紙についての素朴な疑問を山口さんにお答えいただきます。
そもそも紙に文字が書けるのはなぜでしょうか。

紙の表面は、一見平らに見えますが、実は、植物の繊維が何層にも重なってできているので、拡大してみると表面は凸凹しているのです。その凸凹の表面に鉛筆をこすりつけると、鉛筆の芯の黒鉛が削れて、文字が書くことが出来るのです。文字が書けて読めるという状態は、繊維のすき間に黒鉛の細かい粒が入り込んでいる状態です。
凸凹がないフィルムには、鉛筆で文字は書けませんよね。凸凹がなければ、黒鉛は削れないので、書くことができません。

ペンの場合はどうかというと、これは紙の表面の構造が関係しています。
紙は植物の繊維が何層にも重なってできていますが、この繊維は、ストローのような細い管の形をしています。
木材をはじめ、植物の中では、繊維はもともと水や養分を通すために管の形になっているのです。

さらにこれが紙になると、つぶれてたくさん重なっているような状態となるので、繊維同士の間にも非常に小さな空間がたくさんできるのです。
このような状態の紙の表面にペンを近づけると、毛細管現象といって、小さなすき間にインクが吸い取られていきます。そのため、文字が書けるようになります。

だいたい筆記に使う紙には、通常はにじみ止めをしていることが多いのですが、にじみ止めの薬品を何も使っていない紙では、インクはにじんでしまいます。
「筆で和紙に文字を書くときは、にじみができて、それがいい味になりますよね」と丹野みどり。書道で使う紙のように、にじむように作られる紙もあるそうです。

紙が黄ばむのは「リグニン」の仕業


紙についての疑問として、あとひとつ、古い紙はなぜ黄ばんでしまうのでしょうか?

それは「リグニン」という物質が原因です。工業的にたくさん作られる洋紙は、多くが木材繊維を原料としているのですが、この木材の中で繊維と繊維をくっつけている接着剤のような役割をしている物質を「リグニン」といいます。
紙の原料を作るときに、このリグニンを取り除いて、1本1本の木材繊維を取り出し、その繊維を何層にも重ねて紙を作ります。このとき、繊維の取り出し方によってリグニンが少し紙に残ってしまうことがあります。

このリグニンという物質は、光や空気中の酸素や熱の影響で変化するので、紙は黄色や褐色に変色してしまいます。
一番簡単にイメージできるのは、新聞紙でしょうか。庭先やベランダにしばらくの間放置した古新聞は、黄ばんでしまいますね。

今回は事前に山口さんにたくさんの紙にまつわるお話を聞かせていただきました。
残念ながら一部分しか放送できませんでしたが、身近な紙にたくさんの驚きの話が詰まっていました。
(ディレクター榊原)
丹野みどりのよりどりっ!
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2017年07月11日16時36分~抜粋

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