1日本の女の子の人形遊びの代表格、もはや国民的着せ替え人形である「リカちゃん」。
いったいいつ発売されたんでしょうか。
丹野みどりが、株式会社タカラトミー広報課の村山麻衣子さんに電話でお話を伺いました。
もしもし、わたしリカちゃん。今年で50歳なの。
「リカちゃん」という世界観
「リカちゃんは1967年に誕生したので、ちょうど今年で50周年を迎えました」
今年で50歳といえば、織田裕二や松岡修造、南野陽子や天海祐希と同い年ですね。
では、どういう経緯で生まれたんでしょう?
「当時、リカちゃんの開発者が『一般の女の子が憧れる世界観を形にしよう』ということで作られた人形なんです。それで、フルネームは『香山リカ』、小学校5年生の11歳。パパがフランス人、ママの織江(おりえ)がファッションデザイナーの日本人という、ハーフの女の子という設定になったんです」
それまで発売されていたお人形というと、海外のものが多く、ここまで人格やストーリー性を持たせたものはありませんでした。劇的だったのです。
リカちゃんのパパは行方不明だった!
お父さんがフランス人というのもインパクトのある設定ですが、更にビックリなのは、当初そのお父さんは「行方不明」という設定だったことです。
というのも、今から50年前の日本のお父さん像は「バリバリ働くモーレツサラリーマン」というのが当たり前の時代。
子どもの人形遊びの世界観に父親が登場する余地はありません。そこで、父親は行方不明という黒歴史設定にされたのです。
また、当時は悲劇のヒロインが女の子に人気があったという要素も反映されているとか。
そんなお父さんが初登場したのは1989年。ちょうどこの頃の世の中は、「週休2日制」とか「マイホームパパ」などの言葉が浸透してきて、お休みの日にはお父さんが一緒に遊んでくれる家庭が増えてきました。
それでリカちゃんの世界にもようやくパパの「香山ピエール」が登場できたのです。
そして現在、パパは“イクメン”キャラへと変貌を遂げました。
リカちゃんには、幼い双子の妹と、三つ子の妹弟がいて、ピエールは甲斐甲斐しく世話をしているのです。
2014年には「イクメン オブ ザ イヤー」も受賞しています。
まさしく、時代を映す鏡なんですね。
孫より後に生まれたおばあちゃん
時代に合わせて生まれた新キャラは、お父さんだけではありません。おばあちゃんも最近、登場しました。
リカちゃんが誕生してから45年後の2012年、母方の祖母として香山洋子(56歳)が産声を上げた(?)のです。
なぜこんな遅いタイミングで登場したんでしょうか。
「初代のリカちゃんで遊んでいた、例えば当時11歳の女の子たちが、45年経って56歳になったと考えます。つまり、おばあちゃんになる世代になってきたと。子どもの頃に親しんでいたリカちゃんの世界に、自分の“等身大”のお人形もあっていいのではないかと」
それに、共働きが珍しくない今、お母さん・お父さんだけじゃなく、おばあちゃん・おじいちゃんが子育てするのも普通になってきています。
だからリカちゃんの世界観におばあちゃんが出てきて、一緒に遊ぶというのもおかしくはないのですね。
こうした家族構成はもちろんのこと、リカちゃんが住む家・家電・ファッションなどなど、50年間で様変わりしてきました。
その時代に合わせた憧れを体現しているわけですね。
広がり続けるリカちゃんワールド
そんなリカちゃん、概念も時代に合わせて進化しています。
お子様向けの定番の商品だけでなく、大人向けのコンテンツも現れました。
「スタイリッシュドールコレクション」という、大人の女性のファッションが楽しめるリカちゃん人形が登場。
そればかりか、インスタグラムやツイッターなどのSNSで、非常にオシャレで“リア充”な情報発信をしたり、いろんな企業とコラボしてモデル・イメージキャラクターとして活動したり。
今年は「フランス観光親善大使」に任命されたりと、もはやおもちゃの枠を超えてタレントとして活躍しているのです。
現在、発売50周年を記念して、各地で「リカちゃん展」が開かれています。
東海エリアでは8月9日(水)から松坂屋名古屋店で行なわれるそうです。3世代で楽しめそうですね。
見た目や設定など、いろいろと着せ替えられていくリカちゃんですが、その世界で遊んだ少女の心は、永遠に変わらないことでしょう。
(岡戸孝宏)
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