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「認知症の治療薬の候補になる物質を新たにつきとめた」と国立循環器病センターの研究グループが今週発表しました。
植物の「アザミ」の一種に含まれる成分が認知症の改善に役立つということを、動物実験で確認したそうです。
実際、人の治療に応用できるのかどうか、今後への期待と課題について、CBC論説室の後藤克幸解説員に詳しく話を聞いていきます。
アザミは認知症を救う特効薬となるか
今回の研究発表のポイントは?
認知症の中でも最も多いと言われているのが「アルツハイマー病」です。
この病気が発症する原因は脳の中の、脳の活動には不要で有害なたんぱく質が蓄積することによります。
今回この研究グループが注目したのが、野草の「アザミ」に含まれる成分。
これを抽出して認知症を発症したマウスに投与実験を行ったところ、マウスの脳の中の不要で有害なたんぱく質の量が減少しました。
さらに認知症とみられる行動も回復したのです。
この実験から、アザミに含まれる成分が不要なたんぱく質を減らすだけではなく、認知機能の改善にも効果があるということがわかりました。
研究グループはこの成分がアルツハイマー病の有効な治療薬の候補になると期待をしており、来年の3月までには実際に人を対象にした臨床試験を始めたいとしているとのことです。
動物と人間は違う?
「動物実験ではうまくいっても、人ではうまくいかないということが結構あるんですよね?」と尋ねる丹野みどりに対して、「医学の研究の中ではそういうことは非常に多くあります。」と後藤。
専門家によると、認知症の治療薬の開発は世界中で多くの研究機関や製薬会社がトライしているが、動物実験ではいい結果が出ているものでも、人間を対象にするとことごとく失敗に終わっているという実情があるとのこと。
さらに脳の中のたんぱく質を減らすことが実現しても、すでに発症をし一旦スイッチが入ってしまった認知症はたんぱく質を消しても症状が元に戻らないという研究もあり、なかなか難しいようです。
未解明な部分が多い認知症
これまでの研究成果によると、脳の中の不要なたんぱく質は20年以上かけてゆっくり蓄積されているということが判明しています。
例えば70歳で認知症を発症した人の場合は、40~50代から少しづつ脳内に不要なたんぱく質の蓄積が始まっていると言われているのです。
しかし、不要なたんぱく質が蓄積してしまう人、蓄積しない人、蓄積しても認知症にならない人などさまざまで、なかなか複雑で未解明なことが多いです。
注目が集まるアザミ
脳にたんぱく質がたまるのを抑える薬としてアザミの成分が有効であるかどうか。
これが、人の臨床実験で明らかになると大きな発見です。
今年度中に開始される、人を対象とした臨床試験の結果に注目が集まっています。
認知症の大きな課題とは
40~50代の若い人の中で、脳内にたんぱく質がたまり始めている人をどのように見つけるのか、どのような検査でピックアップして早期に治療を開始できるのか、という検査法の開発も、医学界における大きなテーマです。
認知症になる前に早期治療を開始し、発症を予防できる医療が確立されていくと、将来の認知症患者を減らすことが可能になると期待されています。
(minto)
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