レンタルビデオ店に寄ったら、変わった企画を見かけました。
その一角に置かれてある作品のパッケージは全て、特製カバーで覆われています。
映画のタイトルはもちろん、写真・監督・キャストなどの情報は一切不明。
わかるのは映画のジャンルと、その作品に対し店員がつけたキャッチコピーのみ。
作品タイトルも監督名もキャストも一切不明でビデオを借りる?
とにかくパパが強くて全員ボコボコにします
「先を読めば読むほど騙される」
「人間の腐った部分を詰め込んだらこうなる」
「とにかくパパが強くて全員ボコボコにします」
…このようなコピーが各作品に記されています。
その企画スペースにはこう書かれたポスターがありました。
“「敢えて見ない」という借り方。”
これは、レンタルビデオ店のTSUTAYAが行なっている『NOTジャケ借(がり)』という企画。
元々は昨年10月、東京の一店舗だけで試験的に始まったもの。
それが今年に入ってツイッターを中心に話題を呼び、ついには2月中旬、全国展開することになったのです。
まず利用者は、キャッチコピーを見て興味を持った作品をレジに持っていく。
そこで作品名を教えてくれるため、過去に観たことがある作品ならチェンジができる。
借りた後は、どんな作品だろう?とドキドキしながら家路につく。
なんとまあ、福袋感の強いエンターテイメントでしょう。
タイトルなどの情報を伏せて発売…といえば、『文庫X』が昨年評判になりました。
岩手県のある書店が仕掛けた企画で、本のタイトル・著者・出版社は一切隠し、明かしたのは次の3点のみ。
「価格は税込みで810円」
「ジャンルはノンフィクション」
「ページ数は500ページ以上」
この話題が全国に広まり、5万部を超える大ヒットとなりました。
(その本の正体は昨年12月に明かされましたが、まだ知らない人のためにここでは伏せておきましょう)
NOTジャケ借の発案者は、この企画に刺激を受けたのかもしれません。
もっとも、ジャケットや表紙を見せないというキャンペーンは、過去にも数例あるそうです。
おそらく今はツイッターなどのネット拡散力がより大きくなっていて、影響力も強いのでしょうね。
さて、NOTジャケ借について。
ネット上では「先のわからないドキドキ感。まるでミステリーツアーのよう」という意見もあるそうです。
人は謎めいたものに惹かれます。
転校生が教室に入ってくる時のクラスメイトの気持ちが、 初めてウニを食べようとした勇者の気持ちが、 得体は知れないけど目の前で動いてるモノにちょっかい出してしまうネコの気持ちが、少し体験できるのかもしれません。
それに、人は考えてしまう生き物です。
キャッチコピーでどんな作品か想像させる、クイズ要素も魅力なのでしょう。
情報をシャットアウトする楽しみ
現代は情報があふれ返っています。
私たちは無意識のうちに、事前に集めた情報が合っているか確認しているだけじゃないか?
「ああこれ、雑誌で見たシーンね」と思いながら映画を観たり、 「ネットの評判通りの味だわ」と思いながら食事をしたり。
もちろん、いろいろ下調べしてから行く楽しさもありますが、たまにはぶっつけ本番で挑戦し、 ライブ感を味わうのも大切なのではないかと語る、丹野みどりなのでした。
(岡戸孝宏)
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