北野誠のズバリ

再配達を有料化しても解決しない物流問題

ドライバー不足に伴う物流業界の危機が「2024年問題」として懸念されています。
そんな中、配達員の大きな負担となっていた再配達を有料化しようという動きが高まっています。

有料化により再配達が減り、ドライバーの仕事量を減らすことが目的ですが、「根本的な解決にはならない」という意見もあります。

7月20日放送『北野誠のズバリサタデー』(CBCラジオ)では、「安易な再配達有料化は問題だ」と主張する物流ジャーナリストの坂田良平さんが、再配達有料化の問題点について解説しました。

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再配達は増加傾向に

2015年に国土交通省は、宅配再配達による社会的損失は年間約1.8億時間、約9万人分の労働力に相当すると発表しました。

その後、再配達率は下がったものの、コロナ禍後は下げ止まり、配達量が増えたことから再配達も増加しているそうです。

坂田さんによれば、2020年に8.5%まで減った再配達率は、以降11%程度にまで上昇、さらに2020年からの3年間で1.7億個も増えてしまっているとのことです。

再配達が増える中で抑止効果が期待されている有料化ですが、なぜ坂田さんは効果がないと主張しているのでしょうか?

坂田さん「再配達を有料化してしまうと、今までは無料でドライバーさんに申し訳なかったけど、有料だったら再配達してもOKだよねって考えて、再配達の抑止効果になるどころか、むしろ再配達が増える可能性が高いからなんですね」

有料化した時の人間心理

この考えは、実際に行動経済学の実験でも証明されています。

イスラエルの保育園で行った実験によれば、こどものお迎えの時間に遅刻する保護者に対し、遅刻を減らすために日本円で400円程度の罰金制度を設けたところ、むしろ遅刻者が倍増してしまったそうです。

罪悪感が薄れ「お金を払って済むなら払う」という考えに至ってしまうからで、再配達の有料化も同じような結果になる可能性があると指摘する坂田さん。

ある調査で「再配達にいくらなら払っても良いか」と尋ねたところ、3割ぐらいの人が100~200円未満と回答したそうで、そうすると、例えば再配達料が200円だとあまり抑止効果はないということになります。

一方で1,000円以上でも払うと答えた人は3%しかいないため、1,000円程度の再配達料なら抑止効果は高そうです。

ただ再配達料が高くなると通販の売り上げが減る可能性もあり、通販業者からの猛反発も予想されます。

再配達を減らすには

では、再配達を減らすためには、どのような方策があるのでしょうか?

坂田さん「再配達料金という考え方は、アメとムチでいうところのムチなんですよね。アメの設定をしたらどうかと。

あるECサイトで実際に行った社会実験で、通常は翌日配達なんですけれども、注文から例えば3、4日後といった余裕を持った配達日を指定してくれた人に10~50円ぐらいのポイント還元をやってみたところ、約半数の人が利用してくれたんですね。

ゆっくり配送とかゆったり配送とか呼んだりするんですけど、同じような考え方で配達日に幅を持たせる。

例えば8月1日から5日の間で、宅配業者さんが都合の良い日時に配達してくださいっていう人にポイント還元するといった方法が効果的じゃないかなと思っています」

ただ、これは再配達自体が減るわけではありませんし、通販業者側のシステムを改修しなければならない場合は協力が必要です。

坂田さんは、現時点では再配達に関する社会実験は行われていないため、置き配の推奨や時間指定のさらなる活用なども含めて、検証が必要だとまとめました。
(岡本)
 
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2024年07月20日09時42分~抜粋

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